研究課題
若手研究(B)
プロテアソームは巨大なタンパク質分解酵素複合体であり、複数の相互作用タンパク質群によりその分子集合、活性が調節されている。PI31はプロテアソームの分解活性に影響するとともにウィルス感染時などに産生される免疫型プロテアソームの複合体形成を抑制することが報告されている。PI31によるプロテアソームの調節機構を明らかにすることが本研究の目的である。本年度の研究では大腸菌発現系を用いたPI31の精製法の確立し、PI31-プロテアソーム複合体結晶化を目指した。PI31はC末端ドメインにプロテアソーム結合性のHbYXモチーフを保持しており、本モチーフを介して複合体を形成していると考えられる。しかし、従来のPI31精製法ではC末端が切断されていた。そこで、この原因をタンパクの発現不良と非特異切断の両面から考察し、発現方法の最適化とプロテアーゼ阻害剤を用いることで、切断物を抑えたタンパクの精製条件を確立した。結晶化を目指した、安定な複合体形成条件の検討ではHbYXモチーフとプロテアソームの結合が塩濃度に依存することから、塩濃度等の条件を検討し複合体形成を試みた。また、プロテアソームサブユニットの変異体がPI31の機能を相補する可能性が示唆されたことから、PI31の機能の理解を目指し、サブユニットの変異型20Sプロテアソームの精製・結晶化を行った。本実験では結晶化条件検討の結果、単結晶を作製し、放射光を用いたX線回折実験により分解能3.15Åのデータを収集した。
2: おおむね順調に進展している
PI31によるプロテアソームの機能調節機構の解明を目指し、PI31の機能を相補する働きを持った、変異型20SプロテアソームのX線回折データ収集に成功した。また、20Sプロテアソーム-PI31の複合体結晶化のため、完全なPI31の精製条件を決定した。これらの成果は、20Sプロテアソーム-PI31複合体結晶構造解析に向け、大きく前進する結果であり、PI31の調節機構を理解するための研究も順調に進んでいる。
本年度得られたPI31の機能を相補する変異型20Sプロテアソームの測定データをもとに構造精密化を進め構造決定を行う。PI31の機能の推察をするため、野生型20Sプロテアソームと構造比較を行い、基質に対する影響などを考察する。また、PI31-20Sプロテアソーム複合体構造解析は、最適な複合体形成条件の探索を行い、結晶化を行う。
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