研究課題
プロテアソームは巨大なタンパク質分解酵素複合体であり、複数の相互作用タンパク質群によりその分子集合・活性が調節されている。本研究はプロテアソームの分子集合・活性の両方への関与が報告されているPI31のプロテアソーム調節機構の解明を目的とした。今年度は、前年度に引き続きプロテアソームとの複合体構造解析に用いるPI31の精製法の検討を行った。ヒトに加えマウス及び酵母のPI31全長および、プロテアソーム結合領域であるPI31 C末端を精製用タグ分子に融合した発現系を作製し、精製方法の検討を行った。またこれらを用い20Sプロテアソームとの複合体形成を試みた。昨年度作製したα7N末端変異型プロテアソーム(PI31の機能を補完する変異)結晶のX線回折データは、野生型20Sプロテアソームの構造を用いた分子置換法により位相決定を行い、モデル構造の妥当性を示す結晶学的R値がRwork/Rfree = 17.3%/24.2%となるまで構造精密化を繰り返した。最終モデルをもとにPI31による調節機構の検討を行った。活性の上昇が報告されているα3N末端欠損プロテアソームの既知構造ではプロテアソーム内腔へと繋がるゲートは開放された活性型であるが、今回構造決定したα7N末端欠損体ではゲートが閉鎖され、野生型と類似した非活性型構造であった。野生型との構造比較の結果、野生型ではα7N末端が分子表面に突出し、α1N末端はプロテアソーム分子表面に沿うように位置しているのに対し、α7N末端欠損体ではα1N末端が突出しているという違いが見られた。現段階ではPI31のプロテアソーム調節機構の解明には至っていないが、PI31が作用すると考えらえるα7N末端はα1N末端の配向に影響することが示唆された。また、α1N末端は他のサブユニットとの相互作用を促進し、PI31必須なタンパク質の分解を活性化している可能性が示唆された。
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