本研究では,成熟社会や非都市的集合体などに適合する芸術理論や社会理論の一端を構築することを目論んで,20世紀の芸術・文芸思潮であるモダニズムの世界観によって捨象された自然観や文明観などを「非モダニズム」の視座として仮定し,その広がりについてアーツ・アンド・クラフツ運動を事例として記述することを試みた。モリスの書物論,アシュビーの芸術教育論,ヴォイジーの建築思想,19世紀末英国の植物模様,大正期の日本におけるモリス受容を主たる研究対象とし,古典主義とロマン主義,科学と芸術,都市と村落,個人と集団などを対立的に扱わない思考的枠組みを提示した。
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