研究課題/領域番号 |
25870644
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 貴之 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (90310979)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学習支援 / ゲーム / 音楽教育 / 小学校 |
研究概要 |
平成25年度は,(1)現在の学習指導要領と小学校の音楽教育に関する調査,(2)教育へのゲーミフィケーション導入事例の調査,(3)開発する教材の方向性の再検討,(4)物語作成と作曲の基本的な部分のウェブアプリケーションによる実装,(5)(4)で実現した機能のユーザビリティテストの実施の5項目を行った。 (1)では,現在の学習指導要領で示されている基礎的な音楽理論[共通事項]を中心として,歌唱,楽器の演奏,鑑賞,曲作りと様々な活動を通して重層的,かつ,スパイラルなイメージで授業を展開するということがわかってきた。(2)では,アメリカでの市販のゲームを教育に導入した先進的事例を参考にすると,狭い範囲の学習事項を理解してもらうゲーム型教材の開発では,子どもたちの興味・関心を高めることが難しいことがわかってきた。 (3)では,(1)と(2)の結果を踏まえて,ゲームとして面白いものを追及すること,そのゲームを用いた授業案を多く提供していくこと,複数の児童で協調した活動が行えるゲーム環境を整えること,ネガティブなものを排除した他者評価の仕組み作りを実装することという基本的方針を示した。 (4)では,具体的には,直感的な操作,操作方法の統一というユーザビリティの原則を踏まえて,ボタンの配置や操作フローを若干修正し,それをウェブブラウザ上で動作させるようにした。これにより,インストールという手間が省け,授業実践を行う環境を容易に整備できると考えられる。(5)では,平成26年の3月に小学校2年生の男女5名にユーザビリティテストを実施した。これにより,児童が本教材に対して持っているメンタルモデルが音楽の経験により異なると予想されること,システムの挙動を見て,低学年の児童でも簡単にシステムの操作を修正し,うまく活用できることなどの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,学習教材とゲームの中間となるコンテンツを構築することで,学習指導要領に合致した内容でありつつも楽しみながら音楽を学ぶことを目指してきた。しかし,研究実績の概要でも示したが,現在の学習指導要領や実際の小学校のモデルケースの授業の調査結果から,本教材が目指していたポリシーのまま開発を進めると,実際の教育現場で求められているコンテンツと大きく乖離する可能性が高いことがわかってきた。アメリカでの市販ゲームによる教育実践事例を踏まえると,今後は,教育用コンテンツという制約条件をできる限り緩和し,なるべく純粋なゲームとして開発を進めることと,その開発したゲームを授業で活用するカリキュラムを提示することの二つを完全に切り離し,それぞれを深く検討することで,当初の研究目的を達成できるのではないかと考えている。このことから,教材の方針に関して大きな変更が発生し,方針自体を再検討したことにより,当初の研究計画より遅れていると判断している。 しかし,作曲や物語作成の基礎となる部分については,対象となる小学校中学年より低い年齢の小学校2年生にユーザビリティテストを行ったことにより,本研究で提示している物語作成,および,作曲の操作フローで子どもたちにストレスなく操作してもらうことができたと同時に,本研究に関する重要な知見を得ることができた。この成果は平成26年度に学外公表する予定であり,さらには,今後の教材開発に生かしていくことが十分可能であると考えることができる。従って,大幅には遅れておらず,やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要,および,現在までの達成度でも述べたが,今後はより実りのある教育実践を行うために,ゲームとしての教材開発とゲームを活用した授業案の作成の大きく2点を分割して進めることにする。 教材開発では,作曲,および,メロディ付き物語作成について,複数の児童で協調して楽しく活動できる仕組み作り,作曲の評価,子どもたちがゲームをやり込める仕組み作り(例えば,アバター,レベルなどの概念)について,設計,実装していく予定である。 特に,平成26年度については,ネットワークを通して,ある子どもが作ったメロディに対して,別な旋律を付け加えたり,ある作曲された音楽に対して,物語のスライドを付け加えたりなど,「付け加え」を中心に実装することを目指す。また,他者による評価として,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における評価をベースとしつつも,子どもたちに寄り添った形での仕組みを検討し,実装を目指す。 教育実践を行うために実施すべき授業案の作成については,本教材の開発があらかた終了した後に行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実績の概要でも述べたとおり,調査を進めていくにつれて,このままの方針では子どもたちが満足する教材を開発できない可能性が高くなり,教材の方針を根本的に変更したため,平成25年度は,教材の開発に関しては,仕様策定,教材の指針などの上流工程と主要な機能しか実装することができず,コンテンツの開発費用が残る形となったためである。 まずは,ユーザビリティテストの成果をまとめ,学外公表するために利用する。 次に,教材開発のための環境整備,コンテンツを配置するレンタルサーバの使用料,さらには,開発補助を行う学生の謝金等に充当する予定である。
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