研究課題/領域番号 |
25870645
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
渡邉 俊 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (10455769)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中世史 / 法制史 / 古文書学 / 公武関係史 / 平氏政権 / 鎌倉幕府 / 朝廷 |
研究概要 |
本研究は、本来朝廷が独占していた流刑を鎌倉幕府が採用し、それを幕府法に定着させていった刑罰史を検討することによって、鎌倉幕府成立史や公武関係史について、流刑の観点から新たな歴史像を提示することを目的としている。 そこでまずは、流刑関係史料の網羅的な収集から研究に着手した。具体的には、『大日本史料』『平安遺文』『鎌倉遺文』『歴代残闕日記』『兵範記』『玉葉』『山槐記』『愚昧記』『百錬抄』『吾妻鏡』などの史料・史料集から、流刑関係記事を朝廷・鎌倉幕府双方にわたって網羅的に収集し、その整理をおこなったうえで、一覧表を作成した。 この表は、流刑地・犯人・犯罪だけではなく、朝廷が流刑を執行する際に作成する流罪官符が実際に発給されたのか否か、流罪官符発給にたずさわった担当者など、今後の研究にとって重要となる情報を記載した基礎資料となるものである。 続いて、収集した史料のすべてについて、流刑地選択・流刑手続き・流刑方法や流刑実施にともなう人的組織などの分析に着手した。結果、流罪官符の発給をともなう朝廷の正式な流刑のほかに、独自の裁量で執行されている私刑とよべるような流刑が、当時、存在していたことが徐々に明らかになってきた。また、本研究の目的の達成に近づくためには、平氏政権の分析が必要不可欠であるとの認識が得られた。 平成25年度の研究の結果、現段階における分析結果をもとにした研究報告「流刑執行の観点からみた平氏政権と朝廷」を用意することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的の第1に、「朝廷・幕府双方にわたる流刑事例を検出し、流刑地選択・流刑手続き・流刑方法や流刑実施にともなう人的組織などについて明らかにする」といった点を掲げている。そのため、はじめに着手せねばならなかったことは、流刑事例の検出である。 この点については、鎌倉幕府初期の段階にいたるまでの流刑事例をおおむね検出できた。また、それら事例を整理したうえで、必要な情報をもりこんだ一覧表を作成することができた。 続いて、流刑事例の分析へと研究をすすめたが、現段階での成果を学会にて報告できるまでに、まとめることができた。 以上の点から、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の第2に掲げた「幕府法秩序に流刑が位置づけられていく過程を、朝廷との関係に留意しながら明らかにする」といった点をふまえ、論文作成へと研究を進展させていきたい。 具体的には、鎌倉幕府体制下の流刑・預制の検討、流刑をめぐる朝廷・幕府の動向についての分析をおこない、学会報告で得られた知見も加えながら、今後の研究の基礎となり得る考察内容の論文を執筆したい。論文の題目については、「中世前期の流刑・預制と朝廷・幕府」(仮題)とする。 なお、平成26年度は東京大学史料編纂所での影写本・謄写本の調査を予定している。また、次年度の研究の基礎作業として、流刑と鎌倉幕府法との関係についての史料収集およびその検討に着手しておくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において、東京大学史料編纂所への史料調査を予定していたが、実行することができず、次年度におこなうこととしたため。 東京大学史料編纂所への史料調査費ならびにそれと関係する図書の購入費にあてたい。
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