朝廷が独占していた流刑を鎌倉幕府が採用し、それを幕府法に定着させていった過程について研究した。とくに、流刑手続きや流刑実施にともなう人的組織の分析、幕府の流刑と前代の流刑との関係性の分析を中心に検討をすすめた。研究の成果は次の2点である。 ひとつは、幕府の流刑が、幕府成立以前の段階よりみられた武士による在京活動・都鄙間交通といった動向を前提に築かれたことを明らかにし得た点である。ふたつめは、流刑の観点から検討された国家領域観に関するこれまでの研究が、穢・祓の解釈と密接に結びつきながら展開したことを指摘した点である。
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