研究課題
本研究の平成26年度における主な取り組みは、不登校やひきこもりの子を抱えた親たちが自主的に参加する自助的グループ・ミーティング(以下GM)において、GMの前後に参加する親たちに自己記入式の質問紙調査を行い、彼らの共依存的特徴に焦点を当てて分析することである。GM開始前の質問紙調査では、昨年度の調査同様に1、「参加する親の基本属性」。2、「GMへの参加意欲」。3、「現在抱えている主な問題」。4、「参加前の気持ちについて(自由記述)」。さらに、今年度については、上記に加えて共依存測定尺度への回答を求めるとともに、GMの最中に参加者の発言から彼らの共依存的傾向について聴取を行った。共依存とは、親と子あるいは親同士の心理的及び行為的依存関係であり、対象に対するコントロール欲求とも言える。また共依存関係は様々な依存(アルコール依存等)を醸成する関係依存とも言われている。親の共依存傾向については、共依存評価尺度の得点に、不登校やひきこもりを抱える親たち全てに似たような得点分布の傾向を見いだすことはできなかった。しかしながら、彼らのGMでの発言を継続的に聴取していくと、次のような共依存的傾向が挙げられるものと考えられる。すなわち、母親の子に対する過剰な保護(共依存)があり、さらには母親の子に対する共依存の支え手としての「夫の仕事依存等(夫の不在)」である。それらを土台として不登校やひきこもり当事者たちのインターネット依存や、マンガ依存が醸成されているものと考えられ、以上のことから、不登校やひきこもりという問題は当事者のみを治療対象とするのではなく、家族全体をシステムとして捉えて、当事者以外の家族構成員にコミュニケーション等の改善を促すことが重要であると示唆される。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の初年度においては、不登校・ひきこもりの子を抱えた親たちの自助的なグループ・ミーティング(以下GM)において、親を対象に質問紙調査を行う事としていた。その主要な部分は、このGMを通じて親たちの不安感が軽減されているか否かを評価することであったが、当初の計画通り質問紙調査を実施し、GHQ-12(不安感評価尺度)の得点がGMの前より、後で得点が下がっていることがわかり、GMが親たちの不安軽減を促していると考えることができている。また、本年度(26年度)の計画では、GMに参加する親たちに対して、彼らの共依存的傾向に焦点を当てて調査分析を行う事としていた。共依存評価尺度による得点分布については、不登校やひきこもりを抱える親たち全てに似たような得点分布を見いだすことは出来なかった。しかしながら、親たちの一部の発言を聴取していくと、彼らに特徴的な親の子に対する共依存傾向を見受けることができた。例えば、母の子に対する過剰なケアや、母が子育ての責任を過剰に負う等の行為は、彼らの共依存的特徴として抽出することができた。以上の事から、本研究が当初の計画通りおおむね順調に進展していると考えている。
平成26年度中に質問紙調査によって得ることができた親たちの不安感に関するデータや共依存傾向について、その属性や他の質問項目との関連性を分析するとともに、親たちの不安感をさらに軽減できるようなグループ・ミーティング(以下GM)の行い方についてさらに検討を加えていく。具体的には、親に対してどのような質問(問いかけ)を行う事が、親自身が子に対する共依存の問題に対する認識の仕方に変化を促すのかについて検討していきたい。研究者は不登校やひきこもりの子を抱えた親たちの心理的特徴として、共依存がその中核にあると考えている。平成26年度の調査分析では、共依存評価尺度による調査及び、GMに参加する親たちの共依存的特徴の抽出を行った。その結果、不登校やひきこもりが単なる当事者だけの問題として起こっているのではなく、家族問題全体の表出現象として捉えることが重要であると考えるに至った。従って、3年目以降の研究においては、当初の計画通り、GMに参加する親たちを対象に、自己記入式の質問紙調査「家族機能測定尺度」を行い、親の家族に対する認識に焦点を当てて調査を行い、家族全体をシステムとして捉えながら分析を進めていく予定である。
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アディクションと家族
巻: 第29巻 第4号 ページ: 347-351