認知症治療病棟に入院中で中等度の認知機能障害を抱える患者に対し、参加観察による質的記述的研究を実施した。調査回数は4~14回、得られたデータは5~32場面であった。 調査の結果、認知症高齢者には見当識障害や言語機能の低下に伴い周囲への不安と不快感情が生じていた。周囲への不安と対峙し、不安を対処する方法としてコミュニケーションを図っている可能性が考えられた。調査対象者6名のうち3名は病棟内を徘徊する様子が観察された。周囲に物事を確認する言動には、自己批判の感情を含んでいる可能性のあった者もおり、他者交流が減少していく経過の中でみられた収集的行動は、自己を補完する意味や楽しみであることが解釈できた。
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