研究課題/領域番号 |
25870649
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
野原 克仁 北星学園大学, 経済学部, 講師 (80584854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 仮想的旅行費用法 / カウントデータモデル / 風評被害 |
研究概要 |
今年度の研究の第一の目的は,東日本大震災により被災した東北地方の風評被害により失われた自然体験型観光の便益を計測することにあった.東日本大震災において,津波による被害を受けた地域は太平洋岸に位置し,それらの地域において従来から観光地として発展し,観光産業を主要産業としてきた市町村はほとんどない.しかし,震災後において東北地方の観光入込客数は大きく減少している.その理由は,福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故による風評被害によるものであり,従来から観光地として発展してきた内陸部の主要観光地に観光客が来なくなったためである.このことに着目し,福島県に焦点を絞り過去5年間で福島県への観光旅行の経験がある人のみを対象とした,インターネット調査を行った.このデータを用い,環境質(つまり原発事故の影響)の変化が便益に与える影響を評価することが可能な仮想的旅行費用法(Travel Cost Method- Contingent Behavior;TCM-CB)を応用することで,放射能漏れがなかった場合の仮想的な旅行需要関数を推定し実際の旅行需要関数との差を比較することで,風評被害により失われた東北地方の観光便益を推計することを試みた. 第1段階として,TCM-CBの先駆的研究であるRibaud and Epp(1984)やBockstael et al.(1987)などから,Lienhoop and Ansmann(2011)などの近年においてTCM-CBを応用した研究まで,包括的なレビューを行った. 第2段階として,アンケート調査票を作成し,インターネット調査会社(楽天リサーチ)に依頼し本調査を実施した. 第3段階として,収集したデータの整理を行った.その際,データをオンサイトサンプルとして取り扱い,より精緻な便益推定を行うために新たなカウントデータモデルによる推定手法の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的の達成度に比較して,収集したデータの解析および便益の推定段階まで至っていないことから,やや遅れてはいるものの,当該分野の先行研究のレビュー,データの収集までは順調に行うことができた.やや遅れが生じた理由は,当初の計画にはなかった新たな推定方法の提案のため,理論モデルを再考察する試みを行ったためであり,ネガティブな遅れではない.
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今後の研究の推進方策 |
データの収集と新たな推定手法の提案まで準備がそろっているため,今後はデータの整理・分析を行うだけとなっている.そこで得られた知見を,論文としてまとめ国内外の学会において発表する予定である.この研究が一区切りした段階で,次は本研究の第二の目的である東北地方への旅行時間の機会費用を推計し,寄付と復興ツーリズムの交差価格弾力性を検証することを試みる. 現段階において,特に研究計画の変更や遂行上の課題はない.
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次年度の研究費の使用計画 |
インターネット調査を行うに当たり,調査票の設問数と収集サンプル数により金額が決定されたため,どうしても端数が出てしまったことが理由である. 新たな推定手法を実際に使用するにあたり,統計関連図書が必要となるため,図書関連経費に充てる.
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