本研究では,東日本大震災後から現在までの3年間において,実際に福島県を旅行で訪れた回数と,放射能漏れ事故がなかった場合を想定した仮想的な状況下での訪問回数を用い,風評被害により失われた旅行便益の計測を行った.便益計測の推計において必要となる旅行需要関数の推定のために,オンサイトサンプリングの影響を考慮したポアソン逆正規回帰モデルを,変量効果モデルの枠組みへと拡張したポアソン逆正規変量効果モデルを提案した.その推定結果から,福島県の過去3年における失われた旅行便益は,約3.745兆円であることが分かった.
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