研究概要 |
【目的】肺線維症は、高度の線維化により蜂巣肺を形成する難治性疾患であり、吸入型DDSなどを応用した優れた治療薬の開発が望まれている。肺線維症では肺胞上皮細胞が傷害され、肺胞の閉塞化などの構造変化が生じるため、薬物の肺内動態が正常時とは異なる可能性がある。そのため、肺線維症発症時の薬物の肺内動態を評価することは、吸入型治療薬の構築に必要不可欠である。本研究では、様々な薬物を肺線維症モデル動物に肺投与した際の肺内動態について検討した。 【方法】ラット及びマウスにブレオマイシンを肺投与し、肺線維症モデル動物を作成した。肺線維症ラットに、6-CF、FD-4、FD-10及びFD-70を肺投与した。血漿及び気管支肺胞洗浄液中薬物濃度から、薬物の肺内滞留性を評価した。また、肺線維症マウスに、粒子径125, 400及び850 nmのインドシアニングリーン封入リポソームを肺投与した。投与後の肺内動態をin vivo imaging装置を用いて評価した。 【結果および考察】肺線維症ラットにおいて、各分子量の薬物肺投与後の血中濃度は、正常ラットよりも高い値で推移した。このときの気管支肺胞洗浄液中の残存量は、いずれの薬物も正常動物より低い値を示した。一方、肺線維症マウスにおいて、リポソームは正常マウスよりも肺内に残存し、粒子径125 nmで最も高い滞留性を示した。これらの結果は、肺線維症発症時に薬物を肺投与しても速やかに血中へ漏出するが、微粒子製剤を用いることで、肺内滞留性を確保できることを示唆している。
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