研究課題/領域番号 |
25870658
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
簡 梅芳 東北学院大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20533186)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒ素汚染浄化 / モエジマシダ / 亜ヒ酸酸化酵素遺伝子 |
研究概要 |
ヒ素による汚染の処理に適用できる有効な生物学的環境修復技術を開発することを目的として、本研究はモエジマシダによるヒ素吸収・蓄積機構の解明に関する研究を取り組んでいる。 平成25年度では、モエジマシダの栽培実験を中心に行い、土壌から植物へのヒ素移行の解明およびこのヒ素移行における微生物の関与の解明を目標に実施した。今年度で実施した研究により、下記の成果をあげた。 (1)人工気象器を用いたモエジマシダの栽培実験:栽培土の試料およびモエジマシダ根圏の試料におけるヒ素形態別のヒ素含量経時変化を測定した結果、土壌中に添加した亜ヒ酸は速やかにヒ酸に酸化したのち、モエジマシダに吸収されたことが確認できた。 (2)土壌中のヒ素酸化試験:湿熱滅菌による前処理をした市販の栽培土に、ヒ素濃度の高い畑土を微生物の植種源として添加した実験と、さらに抗生物質の添加によって微生物活動を抑えるコントロール実験を行い、土壌中のヒ素酸化と微生物活動を検討した結果、微生物の添加による土壌中の亜ヒ酸酸化が確認され、さらに微生物活動を抑えた土壌試料では亜ヒ酸酸化も抑えられたことが分かった。これらの結果から、モエジマシダによるヒ素吸収に先立つヒ素形態の変化には、土壌中の亜ヒ酸酸化には微生物の活動が大きく寄与していることが分かった。 (3)モエジマシダの栽培実験において採取したモエジマシダの根圏試料のDNAに対して、微生物由来の亜ヒ酸酸化酵素遺伝子(aroA)を指標にしたtRFLP 解析を行ったところ、特定のaroA遺伝子を保有する微生物種がヒ素の酸化が進行した栽培前期において増加し、のちに減少したことが示されたなど、亜ヒ酸酸化と微生物による活動の正の関連づけが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モエジマシダによるヒ素吸収・蓄積機構の解明をゴールとして、今年度の研究計画では、(1)土壌から植物へのヒ素移行の解明、(2)ヒ素変化における微生物の寄与の度合いの評価、(3)植物根圏の細菌相の解析、三つの項目を計画していた。 項目(1)と(2)は概ね計画通りに進んでいたが、項目(3)について、研究計画では亜ヒ酸酸化酵素遺伝子(aroA) およびヒ酸還元酵素遺伝子(arsC/arr)の分子生物学的な解析を予定していたが、自分の出産に伴い、産前産後休暇を取得したため、平成25年度内では亜ヒ酸酸化酵素遺伝子(aroA)の解析を終了したが、ヒ酸還元酵素遺伝子(arsC/arr)の解析が終わるまでは至らなかった。残った一部の解析は、次年度の研究計画に取り入れ、平成26年度末までには、当初予定した計画通り達成できるように取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、平成26年では当初予定していたヒ素変換能の持つ微生物の単離・同定およびこれらの微生物とモエジマシダの共同栽培実験と平行して、平成25年度に終了できなかったヒ酸還元酵素遺伝子(arsC/arr)の解析も同時に進行する。 平成25、26年度で得られた知見をまとめて、平成27年度では計画通りに栽培実験をスケールアップし、実際の汚染土壌環境に適用するために必要な設計要素を検討し、最適化する。そのうえ、経済な面も意識し、最適化した栽培条件における費用対効果の関係を明確にするとともに、有効かつ実用性のある生物浄化技術として提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
出産に伴い、産前産後休暇を取得したため、予定していた一部の実験と国際学会への出席・成果発表を実施できなかった。そのため、物品費の一部と旅費、そして当初実験の実施に発生する予定の謝金については次年度(平成26年度)使用額として生じた。 物品費として、実験装置を購入することを予定してる。購入する装置を駆使して実験を実施する研究補助員の謝金として、謝金を使用する。また、国際学会には既に出席・発表を申し込んでおり、参加・成果発表を予定している。
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