本研究は、ヒ素超蓄積植物によるヒ素吸収における微生物の関与を明らかにするうえ、ヒ素汚染を効率的に除去する生物学的修復技術の開発を図る研究である。これまでは、1、土壌から植物へのヒ素移行の挙動およびそれにおける微生物の関与を解明した。2、イノモトソウは既知のモエジマシダと同等なヒ素蓄積能を示し、日本東北地方においてヒ素汚染土壌の修復に適用可能なことを確認した。3、両シダの根圏における微生物相は主に土壌微生物由来であり、うちに亜ヒ酸酸化活性を示す微生物を複数確認できた。 最終年度(平成27年度)は、モエジマシダとイノモトソウの根圏から単離した微生物を用いた亜ヒ酸酸化活性および植物生育促進能を指標とする解析を行ったうえ、ヒ素超蓄積を促進するポテンシャルのある微生物とシダ植物の共同栽培実験(圃場にて)を行った。栽培後の植物の後処理について、バイオマス資源として利用する検討も始めた。さらに、植物におけるヒ素超蓄積のメカニズム解明も進んだ。今年度の研究成果を以下に示す。 1、単離した根圏微生物のうち、48時間内にほぼ100%の亜ヒ酸をヒ酸に酸化する強い活性と植物生育促進能を併せ持つ微生物を確認した。 2、上記の微生物をモエジマシダとイノモトソウの共同栽培実験をポット実験から圃場実験にスケールアップし、実際にヒ素濃度の高い土地に適用するための評価を行った結果、微生物・植物共同栽培のほうが、植物バイオマスおよび植物内のヒ素濃度ともに高い結果が分かった。 3、ヒ素吸収後の植物バイオマスの後処理について、バイオマスに含まれる高濃度のヒ素を溶出する効果的かつ低コストの方法を見出し、さらにバイオマスをバイオエタノールに変換するプロセスの構築まで進んだ。 4、植物におけるヒ素蓄積メカニズムについて、シダの胞子体ゲノムDNAを抽出し、胞子体においてはヒ酸還元酵素遺伝子が存在する初歩的な証拠を確認した。
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