研究課題/領域番号 |
25870660
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
山崎 寛之 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (70525344)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 休眠生合成遺伝子 / ケミカルエピジェネティクス / 海洋糸状菌 / 二次代謝産物 |
研究概要 |
糸状菌が有する二次代謝産物生合成遺伝子の多くは休眠状態にあり、これら未利用遺伝子を活用するためにケミカルエピジェネティクスに基づいた遺伝子発現法が近年注目されている。本研究では、同手法に利用可能な新しいエピジェティック因子の探索と各種培養手法の検討から天然物探索の新しいアプローチの開発を目指す。 1.市販で入手可能な低分子化合物を用いて、海洋糸状菌が生産する代謝産物に変化を与える化合物のスクリーニングを行った。 (1)エピジェネティック因子の一つであるヒストンアセチル化酵素を始めとした様々な酵素に阻害活性を示すクルクミンを約50株の海洋糸状菌に添加して培養した結果、3株の糸状菌に代謝物の変化が見られた。新たに生成された成分は、いずれもクルクミンの代謝物であったが、新規クルクミン誘導体が得られた。このことから、本菌株が他の化合物の微生物変換に利用可能かの検討を行っている。 (2)ヒストン脱アセチル化酵素活性化のため、sirtuin活性化剤レスベラトロールの添加培養を行った。スクリーニングによりパラオ産の海洋糸状菌TPU199株の代謝産物に変化が認められた。本菌株はアミノ酸から生合成されるepipolythiodiketopiperazine (ETP) 類を生産するが、本検討によりイソプレノイド経路による代謝物の生産が確認された。 2.本研究の一環として、TPU199株の培養検討を行ったところ、海水培養によりClを取り込んだETPを生産することを見出した。これを応用して、培地中にNaBrやNaIを添加した培養から、BrやIを取り込んだETP類の生産に成功した。さらに、本菌株は長期培養やDMSOを添加した培養に対しても生産性に変化を示し、新規化合物の取得に成功している。本菌株に関する研究は、本課題から派生した新たなテーマとして興味深いと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養条件の検討により、糸状菌が生産する二次代謝産物の多様性を拡張させる点においては順調に進展しているといえる。また、重要な研究材料である海洋糸状菌も、国内外の海洋環境 (西表島、函館、陸奥湾およびインドネシア) より新たに分離した。本課題で第一の目標としている休眠遺伝子を制御する新しいエピジェネティック因子の探索については、引き続き検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、ケミカルエピジェネティクスに応用可能な新しい因子の探索を進める。初年度は市販で安価に購入できる試薬を中心に検討を進めたが、その種類は多くはない。次年度以降は、微生物由来のエピジェネティクス因子作用物質を独自に培養・精製し、本研究に用いることで当研究室のみが行える研究として推進して行く予定である。また、次年度も海洋糸状菌の分離を国内外の海洋環境から行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度においては、安価に購入可能な試薬を中心に検討を進めた。これに伴って生じた差額については次年度に繰り越すことにした。 直接経費については、培養検討に必要な試薬、化合物精製用の担体や有機溶媒に用いる予定である。さらに、本研究に用いる菌株分離のため旅費についても計上する。また、得られた成果の社会発信に努めるため、学会発表および学術論文投稿も計画しており必要経費についても計上したい。
|