研究課題
前年度に引き続き、ケミカルエピジェネティクスに応用可能なエピジェネティック因子の探索と各種培養条件の検討から新規生物活性物質の発見を行った。1.市販で入手可能な低分子化合物を利用して、糸状菌が生産する二次代謝産物に変化を与える化合物のスクリニーングを行った。(1) ヒストン脱アセチル化酵素の一種である sirtuin の活性化剤 resveratrol の添加培養を 50 株の糸状菌に対して行った結果、海洋糸状菌 Penicillium citrinum TPU1321 株が resveratrol の芳香環にアルデヒド基を導入して新規誘導体へと変換した。このような変換酵素はほとんど知られていないため、基質等の検討を行っている。(2) ヒストン脱メチル化酵素阻害剤である tranylcypromine を用いた培養検討から、海洋糸状菌 Penicillium verruculosum TPU1311 株が新たな代謝産物を生産することを見出した。さらに、10 株の糸状菌に適応した結果、1 株 (糸状菌 Aspergillus sp. TPU1343 株) が本阻害剤による誘導生産を示した。現在、本手法により生産が誘導された成分の解析を行っている。2.本研究の過程において得られた培養液を用いて、抗結核作用や抗糖尿病作用 (PTP1B阻害活性) を指標とした生物活性スクリーニングを行った。これまでに、新規抗結核物質として streptcytosine 類、新規 PTP1B 阻害剤として trichoketide 類や verruculide 類を見出した。これら新規物質の生産菌株は、ケミカルエピジェネティクスによる培養検討の第一候補と考えている。
2: おおむね順調に進展している
種々の培養条件検討を基盤とした新規糸状菌二次代謝産物の探索は順調に進展している。平成 26 年度においても、本課題の重要な研究材料である糸状菌を、国内外の様々な環境 (宮古島やインドネシア) より新たに分離した。ケミカルエピジェネティクスに利用可能な新しいエピジェネティクス因子の探索についても、引き続き行っている。
平成 27 年度も引き続き、ケミカルジェネティクスに応用可能な新しい因子の探索を中心に研究を進める。これまでの研究過程において、ペニシリン酸やシトリニン等の既知マイコトキシン生産株が高頻度で分離されるが、これらマイコトキシン類が種々のエピジェネティック因子に影響を与えることが近年報告された (Oh, S.-Y. et al., Mycotoxin Res. 2013, 29, 235)。そこで、マイコトキシン類を利用した培養検討も併せて進める予定である。また、新たな糸状菌の分離も国内外で行う。
平成 26 年度においては、対象とする菌株を絞って検討を進めた。これに伴って差額が生じたため次年度に繰り越すことにした。
直接経費については、微生物培養や化合物の分離・構造決定に必要な試薬に用いる。また、本研究に用いる微生物菌株分離のため旅費についても計上する。得られた成果は、学会発表および学術論文投稿により社会発信に努めるため、これらの経費についても計上する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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