外分泌腺開口分泌機構の解明を目指して、唾液腺および膵外分泌腺アミラーゼ分泌におけるMyristoylated alanine-rich C kinase substrate (MARCKS) のリン酸化の関与について検討した。今年度は、MARCKSによる脂質ラフトの機能調節の可能性を探るために、ラット耳下腺腺房細胞および膵外分泌腺腺房細胞を用いた実験を行い、以下の内容を得た。 a) 耳下腺腺房細胞および膵外分泌腺腺房細胞において、MARCKSの一部が細胞膜脂質ラフトに局在していた。 b) 分泌刺激剤であるイソプロテレノールまたはコレシストキニンを耳下腺腺房細胞または膵外分泌腺腺房細胞にそれぞれ作用させると、両腺房細胞の細胞膜脂質ラフトにおいてMARCKSの局在がほとんど認められなくなった。 c) 膵外分泌腺腺房細胞において、MARCKSの局在する細胞膜脂質ラフトと同じ膜ドメインから、SNAREタンパク質であるシンタキシン2が検出された。 また前年度より、d) 分泌刺激剤を両腺房細胞にそれぞれ作用させるとMARCKSはリン酸化し、リン酸化したMARCKSが細胞膜から細胞質へ局在変化すること、e) MARCKS阻害ペプチドを作用させると、分泌刺激剤によるアミラーゼ分泌が抑制されること、これらが明らかになっている。 以上より、MARCKSは細胞膜脂質ラフトを介してアミラーゼ分泌に関与していることが示唆された。さらに膵外分泌腺腺房細胞においては、分泌顆粒膜と細胞膜との膜融合に重要な役割を果たすSNAREタンパク質の一つであるシンタキシン2が、MARCKSの脂質ラフト機能調節におけるターゲットの一つである可能性が考えられた。
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