研究課題/領域番号 |
25870669
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
山野井 貴浩 白鴎大学, 教育学部, 講師 (40567187)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 進化 / 教科書分析 / 教材開発 |
研究概要 |
新学習指導要領(文科省2008、2009)に基づく小中高の生物教育では「生物の多様性と共通性」という視点を養成することを一つの柱としている。生物に「多様性」と「共通性」の両方が見られるのは、生物が共通性を保ちつつ進化し多様化してきたためであり、その理解には「進化」の視点が必要である。しかしながら、これまで日本では進化教育が軽視されてきたため、その力を養成する実験・観察教材はほとんど開発されていない。よって本研究はその開発を目的とした。 今年度は高校生物の教科書分析ならびに小学校理科3年生の昆虫の単元において利用できる進化教材の開発を行った。 高校生物の教科書分析に関しては『生物基礎(5社)』ならびに『生物(4社)』の教科書において「進化」「共通性」「多様性」等のキーワードがどの程度使われているかを調査した。その結果、「共通性」と「多様性」の語に関しては、教科書全体を通して比較的使われているが、「進化」の語に関しては『生物基礎』の1編と『生物』の5編以外はほとんど使われていないことが明らかとなった。特に、『生物基礎』『生物』ともに3編(生物の体内環境の維持,生物の環境応答)において、これらの用語が使用されていなかったことから、教科書の記述を補う教材の導入が必要であり、今後、教材の開発を進めていく。 小学校理科3年生の昆虫の単元では、授業後であっても昆虫のからだのつくり(特に脚の付いている部位)に関する理解が不十分であることが報告されている。本研究は,アリとアリグモ(アリに擬態したクモ)を比較することで、昆虫のからだのつくり(特に脚の付き方)の理解と進化的な見方を養成できる小学校3年生用の教材の開発を試みた。質問紙調査の結果、本教材は昆虫の脚の付き方に関する理解を促進すること、進化的な見方のうち適応的な見方を養うことができる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は当初の予定通り、高等学校生物の教科書分析を行った。教科書に掲載されている系統樹の数が少なかったため、系統樹の樹形に関する調査は行わず、「進化」「多様性」「共通性」等のキーワードに基づく分析を行った。その結果、単元においてこれらの用語の使用状況に差があることを見出し、平成26年度以降に教材開発を行う準備が整えることができた。 小学校理科の昆虫教材のレビューを行ったところ、進化的な視点を養成する教材がほとんどなかったため、平成26年度以降に計画していた教材開発を前倒しで行った。開発した教材を利用した授業実践と、質問紙調査による教育効果の検証を行った。その結果、本教材は昆虫の脚の付き方に関する理解を促進すること、進化的な見方のうち適応的な見方を養うことができる可能性があることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
高等学校における進化の教材開発については、平成25年度に行った教科書分析に基づき「進化」の用語がほとんど使用されていなかった分野を中心に、これまで開発されてきた教材のレビューを行う。その結果をもとに教材開発を行っていく。また、系統樹の樹形に関する教科書分析も行っていく。 中学校における進化の教材開発については「脊椎動物の進化」に関して前肢の形態に注目し、系統樹思考を養成する教材の開発を行う。また、高等学校と同様に、系統樹の樹形に関する教科書分析を行い、その結果を教材開発に反映させていく。 小学校における進化の教材開発については、平成25年度に開発した教材の普及を目指して、小学校教員対象のアンケート調査を実施した上で、授業案の作成、アルコールジェル標本のつくり方を詳細に説明する資料の作製、映像教材の公開等を行っていく。
|