今年度は、主に研究成果のとりまとめを行った。小学校3年生向けに開発した「アリグモを利用することで昆虫の体のつくりを理解させるとともに進化的な考察を行う授業の開発」を学術論文として出版するとともに、個人のHPにてワークシートおよび映像教材を公開した。小学校5年生向けに開発した「メダカの食物連鎖を扱った授業」の教育効果を理科教育関係の学会で発表するとともに、論文執筆を行った。中学2年生向けに開発した「脊椎動物の前肢の骨格標本の比較を通して生物進化の実感を伴った理解を図る授業の開発」の教育効果を理科教育関係の学会で発表するとともに、論文執筆を行った。中学校3年生向けに開発した「ゲンジボタルの進化史を考慮した保全のあり方を考える授業の開発」を学術論文として出版するとともに、個人のHPにて教員用授業資料および映像教材を公開した。高校生向けに開発した「種分化のしくみの理解を支援するソフト:オリガミバードシミュレータの開発」、「DNA抽出を通して生物の共通性を理解させる授業の開発」の論文が海外の学術雑誌に掲載された。 その他、小中学生向けの観察実験教材開発のための基礎資料を得るため、小学生は生物は種を守るために繁殖するという「種族維持」の考えを有しているか、および中学生はどの生物が無脊椎動物に分類されるかを理解しているかを確認する予備的な質問紙調査を行った。 研究期間全体を通して、質問紙調査や教科書分析等の現状分析により日本の進化教育の課題を明らかにするとともに、その課題の解決に有効と考えられる小学生、中学生、高校生向けの観察実験教材をそれぞれ開発することができた。だが小中高全体を通して見るとまだ教材は不足しており、系統樹思考を含む進化的な見方を養成するために、今後も現状分析を踏まえた教材開発を行っていくことが必要である。
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