研究課題/領域番号 |
25870674
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
長谷川 紘也 明海大学, 歯学部, 助教 (00635899)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / IRF-8 / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
IRF-8による破骨細胞の抑制機構を検討した。破骨前駆細胞にRANKLを添加すると IRF-8は経時的な減少を認めた。一方、NFATc1はRANKL添加後に経時的な増加を認めた。これは、破骨細胞の分化過程において、RANKLによる刺激に対し、IRF-8とNFATc1が相反的な動きをしていることになる。そこで、IRF-8は破骨前駆細胞において分化の負のマーカーになりうると考えた。 破骨前駆細胞にRANKLと同時にU-73122(PLCγ阻害剤)、BAPTA-AM(細胞内カルシウムキレート剤)を添加すると、IRF-8の減少は認められず、NFATc1の増加も認められなかった。IRF-8が破骨細胞の分化において直接的な抑制効果を有しているかについては、IRF-8の増減を種々の阻害剤等によりさらに詳しく検討する必要があると考える。 また、骨代謝においてメカニカルストレスが骨破壊を促進することは一般的に知られているが、破骨細胞に対し、メカニカルストレスを直接作用させることでどのような影響があるのかは不明な点が多い。そこで、IRF-8を負のマーカーとして用いて、破骨前駆細胞に対し、メカニカルストレスを付与した際のIRF-8の変動を検討し、メカニカルストレスの付与によるシグナル伝達における変化を解析中である。 メカニカルストレスの付与方法についてはいくつか検討を重ねたが、これまでの方法ではうまく圧をかけることが出来ないなど、現在は新たなメカニカルストレスの付与方法を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
破骨細胞分化においてIRF-8は破骨前駆細胞にRANKL刺激を加えるとIRF-8の発現が減少し、NFATc1の増加が認められた。NFATc1は破骨細胞分化のマスター因子とされており、IRF-8はこのNFATc1を抑制していることが示唆されていた。RANKL刺激により生じるシグナルを種々の阻害剤で阻害すると、IRF-8には大きな変化は認められなかった。また、NFATc1の大きな増加も認められなかった。これにより、IRF-8はRANKL刺激により発現が減少することが示唆された。次に、メカニカルストレスによる影響を検討することとした。計画当初は、スライドチャンバーに注射筒をシリコンチューブでつなぎ、水圧を付与してメカニカルストレスを付与する予定であった。しかし、この方法ではプラスチック製のスライドチャンバーが圧によりたわみ、うまく圧がかけられないことが判明した。また、注射筒では高さが生じるため浮力が生じ、実際に付与したい圧をかけることが難しいことも判明した。そこで、いくつか検討を重ね、現在はデッシュに播種した細胞にカバーガラスを直接置いて圧縮力をかける方法を検討中である。メカニカルストレスの付与方法は次年度に検討する予定であり、前倒しでいくつか検討することが出来たことはよかったが、メカニカルストレスの付与方法が確立しておらず、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、まずメカニカルストレスの付与方法の確立が急務であると考えている。現在行っている破骨前駆細胞に、72もしくは96時間後に、荷重としてカバーガラスを重ねて24時間圧縮力をかける方法をもう少し設定条件を検討し、適切かどうか判断したい。荷重は、カバーガラスの枚数を変えることで調整を行っている。24時間後にTRAP染色で成熟破骨細胞への分化を比較し、至適圧縮力を決定する予定である。至適圧縮力を決定したのちに、象牙切片上で骨吸収活性(吸収窩面積)を検討したい。 また、阻害剤を用いて破骨細胞分化を阻害することで、IRF-8、Blimp-1、NFATc1等の変動を検討し、至適圧縮刺激によるmRNAへの影響を検討することで、破骨細胞関連遺伝子の変動を確認し、IRF-8の発現変化による破骨細胞抑制効果を検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の際に用いるワイパー類の節約により、619円と少額ではあるが節約ができたため、繰り越し金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の研究遂行において、少額の直接経費(619円)が生じたが、平成27年度の研究費と合わせて、試薬等にかかる費用の一部として使用する予定である。
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