研究課題/領域番号 |
25870676
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
篠田 一馬 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50639200)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マルチスペクトル画像 / カラーフィルタ / 色補間 |
研究概要 |
本研究では単板マルチスペクトルフィルタ(Multispectral filter array, MSFA)を用いた低容量な画像システムの実現のため,MSFAの設計,デモザイク,画像圧縮の検討を行っている.平成25年度は,スペクトル解析に適したMSFAの設計と,デモザイク手法の開発を行った. まずスペクトル解析に適したMSFAの検討では,病理画像や植生解析など色分布が偏っている画像においては限られたフィルタ枚数でも十分な解析効果が得られる可能性があるため,本年度では中心波長が等間隔となる16バンドのフィルタを想定し,フィルタの空間配置をSimulated annealingによる最適化で求めた.その結果,最適化されたMSFA配置は,他の配置と比べて復元スペクトルの精度を高められることがわかった.本成果は平成25年12月に国際会議Picture Coding symposiumにて発表を行った. デモザイク手法の検討では,既存アルゴリズムを用いて十分な精度が得られる場合は新規開発を省略する予定であったが,既存のものでは精度が低いことが明らかとなったため,新規手法の開発を行った.従来手法では考慮されていなかったバンド間の相関性の違いに着目し,その強弱に応じて補間時の重みを変えるアルゴリズムを開発した.その結果,提案手法は既存のデモザイク手法より大幅に画質を改善できることが確認できた.本成果は平成25年11月に国内研究会のSIPシンポジウムで発表を行い,さらに平成26年10月に開催予定の国際会議IEEE International Conference on Image Processingに投稿を行った. 本年度に開発したデモザイク手法にはまだ空間的偏りに対する改良余地があるため,来年度も引き続きアルゴリズムの改良を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MSFAの設計検討については,NP困難問題であるため,従来研究では最大5バンドまでしか配置の最適化を行うことができなかった.しかし本年度の成果により,16バンドの配置を数分以内という実用的な時間で求めることが可能となったため,設計検討については当初の予定よりも順調に進んでいる. 加えて,まだ対外成果発表まで至っていないものの,モザイク画像の圧縮についても国際標準方式であるJPEG2000を超える成果が得られており,国際誌への投稿準備を進めている.本成果は当初平成26年度に実施予定の計画であったため,圧縮検討についても当初の予定より順調に進んでいる. しかしデモザイクの検討については,学術的には新規的な手法を開発できたものの,実用化を目指す場合にはまだ検討の余地がある成果となっている.当初は予定していなかったが,平成26年度も引き続き検討を行う予定であり,やや進行が遅れている. MSFAの設計,圧縮,デモザイクを総合的に考慮すると,本年度はおおむね順調に進展しており,来年度も計画通りに研究を遂行する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
MSFAの設計については当初の予定より順調に進んでおり,当初計画には含まれていなかった具体的アプリケーションを想定したフィルタ分光感度の最適化も考慮に含めて検討を進める予定である. デモザイクについては,病理診断への応用を具体的アプリケーションと想定し,その診断または解析に耐えうる画質を目標としてさらなるアルゴリズムの改善を行う予定である.その際,研究協力先である埼玉医科大学に意見提供を求め,より実用に則した品質目標を設定する. モザイク画像の圧縮については,本年度にJPEG2000を超える非常に有用な成果が確認できたため,今後は画像による依存性やその性能差の原因解明など,標準化への提案も考慮した検討を進めていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は年度末の国内会議にて成果発表を行う予定であったが,成果をより広く公表するために,次年度の符号化を専門とする国内会議に投稿を行うよう計画を変更したため. 翌年度分として請求した助成金は当初の予定通り使用する.併せて,10月開催予定の符号化に関する国内会議への参加旅費に29,566円を充当する.
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