研究課題/領域番号 |
25870681
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
瀬尾 誠 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10406473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | いんげん豆 / リノール酸 / 肝細胞 / 脂肪滴蓄積 / 生理活性成分 |
研究概要 |
平成 25 年度は、研究代表者が以前より検討してきた in vitro 脂肪肝形成モデルに対して顕著な抑制効果を示したいんげん豆抽出物に焦点を当て、その抽出物中の生理活性成分を含んでいる可能性が高い分画を得ることを第一目標として研究を遂行した。 クルードないんげん豆抽出物は、従来通り乾燥いんげん豆をミルで破砕し、含水エタノールで一晩静置した後、上清をフィルター濾過して調製した。この抽出物に含まれるエタノールをエバポレーターで留去後、SepPak C18 カートリッジによる固相抽出を行った。まず蒸留水でコンディショニングしたカートリッジにいんげん豆抽出物を添加し、蒸留水で洗浄した洗浄液を水抽出物として分取した。複数の有機溶媒それぞれを 10%, 30%, 60%, 90% の抽出液にて溶出した分画を濾過滅菌した。 各分画における脂肪肝形成に対する改善効果の評価は、ヒト初代培養肝細胞を用いた in vitro 脂肪肝形成モデルを用いた。すなわち、ヒト初代培養肝細胞に、高濃度長鎖脂肪酸を添加するのと同時に各分画を添加し、24 時間後に Oil Red O 染色して細胞内への脂肪滴蓄積の程度を形態学的に評価した。また別に各処置を行った細胞を Oil Red O 染色した後、 100% イソプロパノールで色素抽出して吸光度 (測定波長 490nm) を測定し、その数値の減少を脂肪滴の減少の指標として、脂肪滴蓄積の程度を併せて評価した。その結果、クルードないんげん豆抽出物を用いた場合と比べて、脂肪滴蓄積抑制の程度は低かったのではあるが、複数の分画において改善効果が認められた。脂肪滴蓄積抑制が低くなったのは、最終的な抽出物のマス量をクルードの抽出液にあわせたためであると考えられたため、ある程度の効果が認められた分画に関しては、何段階か用量をふって再検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成 25 年度は、クルードないんげん豆抽出物から各種クロマトグラフィーや固相抽出法により分画を作製し、脂肪滴蓄積に対して顕著な改善効果を評価できる分画を得ることを第一目標としていた。現在までのところ、「顕著」までは至らなかったが、脂肪滴蓄積を抑制することが期待できる分画を複数見出すことができているので、達成度としてはある程度評価できるものと考えている。一方で、ゲル濾過による分画作製および改善効果の評価に関しては、作製した分画がまだ少ないことから達成度としてはやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成 26 年度は引き続き、いんげん豆抽出物中に含まれる生理活性成分を含む分画の探索を行う。特に、平成 25 年度にあまり遂行できなかったゲル濾過による分画調製および脂肪肝形成改善効果の検討に力を入れる。 また並行して、平成 25 年度に絞り込んだ顕著な脂肪肝形成抑制効果を有する活性分画に関して、高速液体クロマトグラフィー (島津製作所, CLASS-10AD) による分離パターンを基に得られたピークを分取し、薄層クロマトグラフィーなどで単一成分であることを確認する。分取した成分が単一成分であることが確認できたら、 液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー (LC-TOF-MS: 日本電子, JMS-T100LC-AccuTOF) および 核磁気共鳴装置 (NMR: 日本電子, EX400) などの分析機器を用いて、構造解析を行い成分同定を行う。 なお、単一成分として同定した成分の脂肪肝形成抑制効果の検証は、平成 25 年度同様 in vitro 脂肪肝形成モデルにて再度確認も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 25 年度は、本研究の in vitro 脂肪肝形成モデルに用いているヒト初代培養肝細胞 (ACBRI3716 細胞) に関して、これまで購入してきたメーカーが取扱いをやめたため、肝細胞および専用培地の購入費を余らせることとなり、平成 26 年度に繰り越すこととなった。また SepPak C18 カートリッジや濾過滅菌用フィルター、細胞培養器具などは、これまでに購入してあった研究室内のストック備品で賄うことができる範囲内での使用であったためである。 繰り越した平成 25 年度の研究費は、別のメーカーより新しく購入する予定のヒト初代培養肝細胞がこれまでと同様な手順で脂肪肝形成モデルとして使えることを優先事項として確認する予定にしており、確認できた細胞株の確保 (バイアルの購入とストック作製) を行う。また、細胞培養器具なども購入する必要があるため研究の進度に応じて随時購入する。 また、平成 26 年度に予定していた研究費分の使途としては、ゲル濾過による分画作成に関しては、使用する担体を変えてさらに分離・精製を進めるため試薬類の購入費に充てる。また各分画において、脂肪肝形成に対する改善効果を有する分画に関しては、 HPLC 用の分析・分離用のカラムの購入費に充てる予定にしている。さらに、脂肪肝形成抑制効果の指標としてきた細胞内の各種脂質濃度を測定するため、トリグリセリドなど脂質関連測定用キットの購入も予定している。
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