研究課題/領域番号 |
25870683
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
松永 愛子 目白大学, 人間学部, 講師 (30461916)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共助力 / 地域子育て支援センター / 子育て広場 / 親子関係 / 居場所 / エスノグラフィー / 身体的同調性 / 子育て支援 |
研究概要 |
本研究は、乳幼児の「共助力」が育つ親子関係や社会条件を明らかにする目的を持つ。「共助力」とは、乳幼児が遊びを通して身につける他者への思いやりや忍耐力等を指す。そのため「共助力」の芽生えには、まずは乳幼児同士が出会う「居場所」が必要である。本研究では、現代の親子の「居場所」の一つである「地域子育て支援センターY」の「子育て広場」に注目し、エスノグラフィーによる記録、インタビュー、アンケートを組み合わせる質的研究を行っている。 本年度は、参与観察を月に2回・合計24回実施、参与観察の記録の分類・体系化のため研究会を年に4回実施、参与観察結果の中間報告会を「地域子育て支援センターY」のスタッフに対し実施、当該施設利用者へのアンケート調査を実施した。 参与観察の結果、乳幼児は身体的同調性が高いため、他児の真似をして動く傾向があり、善悪の判断は事後的にしか及ばない場合が多いことがわかった。そのため一般の親は、事前に危機を回避する行動をとりがちであると思われた。しかし、「地域子育て支援センターY」では、見守り行動を取る親が多かった。 その理由として、「子育て広場」における親子関係の特徴、(1)親子の身体的同調性が高いと子どもが親と離れて安心して遊び始める(2)親同士が関わりはじめると子ども同士も遊び始める(3)親同士がさらに親密になった場合は子ども同士がダイナミックな遊びをし始めても見守る行動をとる、という点が挙げられた。つまり、親が互いを肯定的に認め合う時、子どもの遊びが持続し、内容が豊かになり、共助を経験する可能性が広がった。 親へのアンケートからは、”子どもが当該「子育て広場」に通うことによりできるようになったと思う事項”として、「真似をして行動に移す」「他の子どもと一緒に遊べる」「自分の気持ちを抑えたり我慢する」等が高い確率で選ばれ、観察結果の妥当性を裏付けていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに参与観察が実施できだけではなく、参与観察結果の妥当性を裏付けるためのアンケート調査も実施することができた。 また、参与観察結果の分析のため研究会を行ってきた。さらに詳細な分析については、今後、スーパーバイザーを招いた研究会を実施する必要がある。本年度計画されていたスタッフへのインタビューや、学会発表は次年度以降に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、親同士の良好な関係を築くスタッフの援助方法について明らかにしていく。そのために、当該施設利用者の親や、スタッフへのインタビューを行い、当該施設で養ったと考えられる「共助力」が、子どもの就園後にどのような影響を与えたと親自身がとらえているか、また、親が継続的な通所を決める大きな理由となっているスタッフの援助方法について明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究会にスーパーバイザーを招く予定があったが、次年度以降に行うこととなったため、謝礼金の予算を持ち越した。 また、スタッフへのインタビューを行う予定であったが、これも次年度以降に行うこととなったため、テープ起こしの謝礼金の予算が持ち越しとなった。 また、研究協力者とともに学会発表を行うための旅費を計上していたが、こちらも次年度に行うこととしたため、予算が持ち越しとなっている。 次年度、スーパーバイザーを招いた研究会を行い、参与観察やインタビュー結果の詳細な分析を行う。 さらに、当該施設利用者の親へのインタビューやスタッフへのインタビューを行っていく。その謝礼や、テープ起こしの費用として計上している予算を使用する。 また、10月には教育方法学会にて研究発表を行うため、研究協力者2名と松永の旅費として計上している予算を使用する。
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