本年度は植民地時代の支配体制、特に間接統治の程度が、独立後の政治構造に与える影響を分析するゲーム理論的モデルを構築した。独立後のアフリカ諸国では、中央政府が地方エリートに資源や特権を与える代わりに地方エリートが中央政府の地方統治に協力する提携関係がしばしば観察される。本研究のモデルは、独立後のアフリカ政府は地方の農業部門からの税収に大きく依存していた点を考慮しつつ、このような提携関係を交渉モデルで定式化し、地方エリートと中央政府の交渉力が自らの指示に反した地方住民を罰する能力によって決定されるメカニズムを提示した。 間接統治の程度が高い地域では、植民地支配の過程で地方エリートが地方住民に対して強力な支配関係を築いている。上述した理論的結果は、そのような地域では、中央政府に対して地方エリートが強力な交渉力を得ることとなり、中央政府は地方エリートに特権的な地位や資源を提供せざるを得なくなる事を示唆している。 このような中央政府と地方エリートの提携関係はサブサハラアフリカでは広範に見られる現象であり、アフリカの政治経済を理解する上で重要なテーマであるが、私の知る限り、このような提携関係をゲーム理論を用いて分析した研究はほとんどない。 本研究の結果は“Political Structure as a Legacy of Indirect Colonial Rule: Bargaining between National Governments and Rural Elites in Africa” MPRA Paper No. 48771としてワーキングペーパーとして公開し、現在学術誌に投稿中である。さらに、2014年の3月に行われたThe 51st Annual Meetings of the Public Choice Societyにおいて、研究結果を報告した。
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