独立後のアフリカ諸国では、中央政府と地方エリートの提携関係がしばしば観察されている。そうした提携関係では、地方エリートが中央政府の地方統治に協力し、その見返りとして中央政府が地方エリートに権限や資源を委譲している。こうした提携関係は多くのアフリカ諸国で観察されているが、中央政府が地方エリートを優遇する程度は国あるいは地域間で大きなばらつきがある。 本研究はこのような提携関係が発生する要因とそのメカニズムを理論的に分析し、中央政府が地方エリートに大きく権限や資源を委譲する要因として以下の4点を明らかにした。(1)植民地支配における間接統治の程度が高く、地方エリートの住民に対する支配力が強い。(2)地方エリートが商品作物の国際市場に容易にアクセスできる。(3)地方エリートの支配地域において、商品作物の生産量が小さい。(4)中央政府による直接的な統治が困難である。また、中央政府が地方エリートと提携しないケースでは、地方エリートの政治的および経済的なパワーが大きいほど、中央政府は地方に大規模な統治機構を整備することも明らかにした。 さらに、理論モデルから導出された上述の理論的仮説が現実と照らし合わせて妥当であるかどうかを事例研究を通じて確認した。本研究では、ナイジェリア、ニジェール、セネガル、ガーナ、コートジボワールにおける事例を調査し、そうした事例が理論モデルと整合的であることを確認した。 植民地支配が独立後の経済発展に与える影響に関しては、近年多くの研究が行われており、いくつかの先行研究が間接統治が独立後の発展を阻害すると主張している。本研究の成果は、間接統治の結果、独立後の中央政府は地方エリートに大きく権限や資源を委譲せざるを得なくなることを示しており、間接統治が独立後の経済発展を阻害するメカニズムを理解する上で重要な貢献であると考える。
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