本研究では、主要な国際アクターによる、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプトなどに対する、人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・ 支援、市民社会支援につき、支援の決定と実施のレベルに分けて調査・比較するものである。最終年度の28年度は、前年度に引き続き文献やウェブで情報を収集するとともに、国内外で実地調査を行った。2017年2月には、これまで延期になっていたエジプト調査を行い、民主化及び民主化支援について実態調査を実施した。 本研究の全体の成果については、現在まとめている途上にあり、最終的な形にはなっていないが、28年度も上記の作業を通じていくつかの関連した研究成果を生んでいる。まず、松下冽・藤田憲編著『グローバル・サウスとは何か』ミネルヴァ書房所収の単著論文「紛争後の平和構築―オーナーシップと民主化の課題を中心に」として2016年11月に公表した。同論文では、平和構築が直面しているジレンマや課題について、カンボジアやルワンダなどでの実態を踏まえて、「人々中心の視点」からオーナーシップと民主化、民主化支援に注目して整理したものである。そこでは、過去の事例を踏まえて、平和構築の目標の一つである民主化を進めるにあたって多様なアクターが参加する「民主的」パートナーシップの重要性と課題にも触れている。 また、2016年6月には国際開発学会で「ルワンダのガバナンスに対する国際関係の影響の検証」を報告した。同報告では、本研究の成果の一部を生かして、ルワンダの民主化やガバナンスに対する民主化支援を含めた国際的な影響を検証している。同報告の内容は、修正のうえで論文「ルワンダのガバナンスに対する国際関係の影響- 総合的な検証へ向けた一試論」として、2017年3月に『和洋女子大学紀要』(和洋女子大学)、第57集で公表した。
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