研究実績の概要 |
本研究では、蛍光物質のNBDで標識されたスフィンゴシン1リン酸(NBD-S1P)を用いて、赤血球のS1P輸送体活性を簡便に測定する系の確立を目指している。平成27年度は、赤血球からのNBD-S1P放出測定において使用する試薬や溶媒の条件検討を行った。これまで、赤血球からのS1P放出を測定する場合には、1% BSAを含むバッファーを用いていたが、BSAはNBD-S1Pの蛍光を測定する際、バックグラウンドを上昇させてしまうことが分かった。そこで、0, 0.01, 0.1, 1% BSAを含むバッファーを用いて、赤血球からのNBD-S1P放出を測定した。0.01%以下のBSAを含むバッファーでは、赤血球が溶血してしまったが、0.1% BSAを含むバッファーでは、1% BSAを含むバッファーと比較して、NBD-S1Pの放出量は若干減少するものの、バックグラウンドはほとんど上昇しなかった。また、脂質抽出においては、脂質の分離を促進するために添加していたKCl溶液の塩素イオンが蛍光を減弱する可能性が考えられたことから、替わりに蒸留水を添加したところ、NBD-S1Pの蛍光強度が上昇し、脂質の分離も問題ないことが分かった。また、脂質抽出における水層の容量を減らすことで、水層中のNBD-S1P濃度を高め、蛍光測定時の感度を上昇させられるかどうか検討した。その結果、蒸留水の添加を無くし、メタノールの添加量を0.43倍に減らすことで、脂質の分離には影響を与えずに蛍光強度を約2.3倍上昇させられることが分かった。また、ジメチルホルムアミド(DMF)は蛍光強度を増強させる作用があることから、脂質抽出時の水層とDMFを混合し蛍光強度を測定したところ、水層とDMFを4:1の割合で混合した場合に、同量の水層と比較して蛍光強度が約1.5倍増強されることが分かった。
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