研究課題/領域番号 |
25870701
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
梶山 朋子 青山学院大学, 理工学部, 助教 (20454085)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 書籍表紙画像 / 色抽出 / 色彩心理 / 形容詞 / レビュー |
研究概要 |
感情を色彩情報へ変換する手法の確立に向けて,本年度は,読者の印象を反映させた表紙画像を生成するための色抽出手法を検討した.具体的には,人間の内面的な性質や状態を表す形容詞と色の関係性に着目した色彩データベースを構築し,書籍本文とレビューから表紙色を抽出する手法を提案した.本データベースでは,3184語の形容詞と,色が持つ意味の違いを的確に捉えることができる代表色130色を対応付けた.各色に対し,最大25語の形容詞が定義されている.また,各色に対する各形容詞には,イメージを配色で表現する際に,代表色が使われる頻度を5段階で指数化した値である使用頻度が定義されている. 本手法では,入力された書籍本文とレビューに対し,形態素解析を行い,形容詞を抽出する.抽出された形容詞に対し,各形容詞の出現頻度と,書籍本文と感想文の文章量の比率を考慮し,形容詞のスコアを算出する.その後,形容詞と色の関係性を示す色彩データベースを用いて,形容詞を色に変換する.色のスコアを算出するにあたり,形容詞のスコアだけでなく,色彩データベースに登録されている使用頻度を考慮し,色のスコアを算出する.このスコアが高い色を,読者の印象を反映させた色として定義し,書籍表紙画像色として抽出した. 本手法の評価として,被験者20人による表紙画像の描画による実験,被験者15名による書籍表紙色の選択による実験,被験者20名による販売書籍への適用による実験を行った.その結果, 販売書籍表紙よりも本手法による抽出色を適用した書籍表紙の方が読者の印象に合っていること,書籍本文の文章量には依存せず読者の印象に適合した色抽出が行えること,解説より小説の方がより読者の印象に適合した色抽出が行えること,本手法による抽出色は読後感が充実している読者の心情をより表現できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の課題である感情を表現するための色抽出アルゴリズムの確立,および,抽出色を書籍表紙へ適用させるためのアルゴリズムの確立はおおむね順調に進展している.前者の色抽出アルゴリズムの確立では,色彩心理学の既存研究を踏まえ,感情を表す形容詞と色彩を関連付ける色彩データベースを構築し,書籍本文とレビューのテキストから読者の印象を表現する色彩を抽出する手法を提案した.被験者実験においても,読者が描画した書籍表紙画像の特徴色と一致するなど,本手法の有効性は確認されたため,順調に進展していると考えられる.一方,後者の抽出色を書籍表紙へ適用させるためのアルゴリズムの確立では,タイトルや著者名などの書誌情報の視認性を向上させながら,色彩調和を保てるような配色方法を検討した.被験者実験においても,販売書籍の表紙画像よりも,本手法の抽出色を適用した表紙画像の方が読者の印象と一致するなど,本手法の有効性は確認されたため,順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
提案手法により抽出した色彩を適用した書籍表紙画像を活用し,感情センシングへの応用を試みる.そのために,生成した表紙画像を直感的に閲覧できるような探索システムの構築と,閲覧行動に基づくユーザの関心度を考慮した感情推定アルゴリズムの検討を行う.探索システムの開発にあたり,書誌情報のみならず,生成した表紙画像の視覚的特徴を検索条件として入力できるようなデータベースを構築する.探索インタフェースとしては,多次元属性情報に対し,曖昧な情報要求を持つユーザに柔軟な探索を提供することが確認されているリング状検索インタフェースを改良する.感情推定アルゴリズムの検討では,閲覧時間やマウス操作に加え,閲覧時における被験者の思考を調査することにより,ユーザの関心度と閲覧行動の関係性を検証する.出版表紙画像を表示するシステムと,提案システムを比較することにより,読者の印象を反映させた表紙画像の提示によるユーザの感情推定に対する効果検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
提案手法の評価のため,複数回の実験を実施したが,いずれも無償で被験者に協力頂いたため,謝金が不要となり差額が生じた. 提案手法の実装に対する効率化を図るための開発補助委託費と,国際会議における研究成果発表の旅費として使用する.
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