研究課題/領域番号 |
25870703
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
上出 直人 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (20424096)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高齢者 / 運動能力テスト / 運動能力評価 / 基準値 / メタ分析 |
研究実績の概要 |
1.高齢者の運動能力判定システムの基礎データとして,H26年度は新たに握力の基準値作成を追加して実施した.結果,33論文97データを抽出・分析し,60歳以上の男性の握力基準値33.11kg,女性の握力基準値20.92kgを算出した.また,握力は年齢により基準値が変動するため,年齢による基準値の補正式についても同時に算出した. 2.H25年度とH26年度の実績を基に,歩行速度(快適)・歩行速度(最速)・Timed Up and Go test・5回起立テスト・握力,の5項目からなる高齢者の運動能力判定システムを構築した.システムは,それぞれの運動力測定値から,基準値との乖離を正規分布を使って統計学的に標準化するものである.測定値を0~1点の標準化スコアに変換して,単純かつ視覚的に示すことができるシステムである.すなわち,0.5点であれば同年齢の平均値と同じ,0.5点より低いほど同年齢の平均値より低い,0.5点より高いほど同年齢の平均よりも高いことを単純に理解することができる. 3.運動能力判定システムの有用性を検討するため,ADLが自立した高齢者38名(平均年齢72歳)にシステムでの運動能力評価を試みた.対象とした高齢者は,老研式活動能力指標で13点満点中平均12.0であり,生活機能が良好な高齢者であった.運動能力測定の結果,歩行速度(快適)・歩行速度(最速)・Timed Up and Go test・5回起立テスト・握力の測定値は,それぞれ3.3秒・2.6秒・5.6秒・5.8秒・23.0kgであった.システムで標準化スコアに変換すると,0.80点・0.66点・0.66点・0.84点・0.53点であり,生活機能同様に運動能力も同年齢平均以上であることを,システムにより明確に示すことができた.同時に,運動能力テスト間でスコアに差異があることも示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の目的である運動能力判定システムについては,当初の予定していた4項目での運動能力テストで構成されるシステムから,5項目のテストで構成されるシステムに変更し,システムを構築することができた.また第二の目的である,実際に開発した運動能力判定システムの有用性を検証するための,高齢者を対象とした実証研究も開始することができている.従って,システムの開発についてはすでに目的を達成しており,有用性の検証のための実証研究を遂行していく状態であるため,本研究課題は順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1.H26年度に追加して実施した高齢者の握力の基準値については,今後学会発表および論文発表の準備を進めていく予定である. 2.システムを使った高齢者への運動能力評価については,今後対象者数を増やし,システムの有用性を引き続き検討していく予定である.さらに,同一対象者を追跡調査することで,縦断的な測定にもシステムを使用し,システムの有用性を検討していく予定である.調査については,対象者の募集および追跡調査の準備も整っており,順調に進めていくことが可能であると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については約8,000円である.これは,当初の積算金額と実際の発注額との差額により生じたものである.基本的には,ほぼ計画通りに予算を執行していると考えている.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度については,調査のために必要な調査員の人件費,及び国際学会への旅費や英語論文投稿のための費用や論文投稿費用など成果発表のための予算執行を計画している.
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