最終年度では,平成25~26年度にかけて開発した,運動機能判定システムにより算出できる平均運動機能スコアを用いて,平均運動機能スコアと高齢者の生活機能および転倒との関連を検証した.98名の地域在住の日常生活が自立した高齢者に対して,快適条件5m歩行時間,最速条件5m歩行時間,アップアンドゴー,5回起立テスト,握力,の5種類の運動機能テストを実施,測定結果を運動機能判定システムで解析し,平均運動機能スコアを算出した.さらに,調査票により生活機能と転倒歴を調査した.統計的解析の結果,生活機能低下のある高齢者は,機能低下の無い高齢者と比較して,有意に平均運動機能スコアが低値であった.さらに,転倒歴のある高齢者は,転倒歴の無い高齢者と比較して,有意に平均運動機能スコアが低値であった.平均運動機能スコアによる,高齢者の生活機能低下の識別感度は79.1%,転倒の識別感度は87.0%であった.さらに,48名の対象者には,生活機能と平均運動機能スコアを縦断的に調査し,両者の変化について関連性を検証した.結果,生活機能の変化と平均運動機能スコアの変化には統計学的な関係性を認めた.平均運動機能スコアによる,高齢者の生活機能の悪化に関する識別感度は80.0%であった. 研究全体を通じて,①快適条件5m歩行時間,最速条件5m歩行時間,アップアンドゴー,5回起立テスト,握力,の5種類の運動機能テストの測定結果を簡便に判定可能な運動機能判定システムを構築し,②システムにより高齢者の運動機能を簡便に判定できることを実証した.さらに,③システムで判定される結果は,高齢者の生活機能や転倒と関連することを明らかにし,④生活機能低下に関しては,システムで判定される結果によって予測可能であることを示すことができた.以上の①~④の成果により,運動機能判定システムの開発とその有用性を示すことができたと考える.
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