研究概要 |
最近、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) の名前の由来でもある黄色色素(staphyloxanthin)が、菌の感染過程において必須成分であることが報告された。そこで申請者は簡易的な黄色色素生成阻害活性を評価する方法を構築し、天然物ライブラリーならびに微生物培養液を中心に評価した。その結果、ライブラリーからは citridoneA が色素生成阻害活性を有する事を初めて見いだした。本研究では citridoneA の黄色色素生成阻害メカニズムの完全な解明および誘導体合成による化合物の最適化を行い、新しい作用を有したMRSA感染予防治療薬への展開を目的としている。 昨年度は誘導体の活性評価および化合物の最適化に力を注いだ結果、目的の活性を維持するには構造中の phenilpiridone 環に4,5,6a-trimethyl-3,3a,4,6a-tetrahydro-2H-cyclopentafuran が結合した 3 環性部分が必須であり、かつベンゼン環部分は mono 置換である事が活性には重要である事が判明した。また目的の活性とは異なるが、これら citridone 類がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対し、抗菌薬であるイミペネムの活性を増強する活性を同時に有している事も判明した。これら結果については昨年度論文発表を行っている。また citridone A の活性メカニズム研究では、黄色色素生成阻害によって蓄積した生合成中間体と考えてた化合物がマススペクトル解析により全く異なる分子であるという興味深い知見を得る事ができた。これについては今年度精査を予定している。
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