研究課題
本研究では、放射線治療と薬剤を併用し、原発巣とその周りの潜在的な転移巣へも十分な効果をもたらす治療法の提案を目指した。薬剤候補として金ナノ粒子に着目し、従来よりも少ない投与量で効果を発揮するように、がん細胞へ特異的に集積する金ナノ粒子の開発に必要な基本要件を調べた。【放射線誘発DNA損傷の電気泳動による評価法】金ナノ粒子の放射線増強の効果をDNA分子の切断能力の違いとして定量化する方法として、プラスミドDNAの放射線による形状変化を電気泳動法で定量化する方法を立ち上げた。放射線によるDNA切断は、基質に超らせん状DNAを用いることで、DNA電気泳動法によって、とくに一本鎖切断を高感度に検出可能となった。【金ナノ粒子の性質と増強効果への影響】金ナノ粒子は、表面電荷や粒子径などの条件を変えて増強効果を調べた。結果は、表面が正電荷に帯電した金ナノ粒子の添加によってDNAの一本鎖切断が増えた。これは、DNAが負に帯電しているため、正電荷の金ナノ粒子がDNAに集積したためではないかと考えられる。放射線誘発DNA損傷に対する金ナノ粒子の増強効果は、1)粒子表面の性質と2)溶液条件の影響を受けること、3)高線量が必要であると分かった。がん細胞特異的な金ナノ粒子の開発に向け、1)粒子径、2)標的への結合法、3)ブロッキング剤の改善が必要ではないかと考えられる。【放射線防護剤候補の評価への応用】本研究で確立した、放射線誘発DNA損傷の電気泳動法による評価法を、放射線防護剤の開発へ応用し、成果を得られつつある。放射線防護剤の併用によっても、がん細胞への線量増加と治療成績の向上が可能と考えられる。以上のことから、本研究で進めた放射線誘発DNA損傷の電気泳動法による評価法は、放射線増感剤および放射線防護剤の開発に有効であり、がん細胞特異的な金ナノ粒子の開発に必要な基本要件が明らかになった。
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2015 Annual Report of the Research Project with Heavy Ions at NIRS-HIMAC
巻: 平成27年 ページ: 印刷中
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 112 ページ: 7495-7500
10.1073/pnas.1422203112
2014 Annual Report of the Research Project with Heavy Ions at NIRS-HIMAC I
巻: 平成26年 ページ: 52-53