研究課題
若手研究(B)
まず脂肪組織中のNKT細胞を解析した結果、脾臓や肝臓のNKT細胞と比べると、TCR-Vb鎖の違いや、CD3/CD28刺激時のサイトカインの産生パターンが異なっていることが認められた。具体的には、脾臓や肝臓のNKT細胞はIL-4やIFN-gなど幅広くサイトカインを産生するのに対して、脂肪組織中NKT細胞はIL-17やIFN-gを産生し、IL-4やIL-10を産生しない。このことから、脂肪組織中NKT細胞は炎症を誘導するようなタイプに傾いていると考えられる。次に、脂肪組織中NKT細胞がどうのような細胞相互作用により活性化し得るかを検討するために、3T3L1細胞を用いた。3T3L1細胞を適切な培養条件で脂肪細胞に分化誘導させると、NKT細胞への抗原提示分子であるCD1dを強く発現するようになった。また、マウス脂肪組織から採取した脂肪細胞においてもCD1dを発現していることが認められた。それに加えて、共刺激分子であるCD80, CD86も発現していることが確認できた。そこで、分化誘導した3T3L1細胞とマウスから採取したNKT細胞をそのリガンドであるa-GalCerとともに共培養し、NKT細胞が活性化するかを調べた。共培養の結果、培養上清中にIFN-gやIL-13, IL-4などのサイトカイン産生が認められた。このことから、NKT細胞は脂肪細胞に抗原提示され、活性化されることができると示された。以上から、脂肪組織においてNKT細胞は脂肪細胞から活性化シグナルを受け取り、サイトカインを産生することで脂肪組織炎症に関与し、インスリン感受性に寄与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
脂肪組織中NKT細胞と脾臓または肝臓中NKT細胞との比較により、TCR-Vbの違いや産生サイトカインの違いを明らかにでき、脂肪組織中NKT細胞の性格が他と異なるということが示唆された。また、in vitroでの3T3L1細胞とNKT細胞との共培養によって、脂肪細胞とNKT細胞とがCD1d分子を介して、相互作用していることが示された。3T3L1のようなcell lineではなく、実際の脂肪細胞との相互作用は未だ確認できていないが、脂肪組織においてNKT細胞が活性化される可能性および新たな細胞間相互作用の発見が示唆された。脂肪組織中におけるNKT細胞の役割を明らかにするという観点から、当初の実験計画におおむね沿っていると考えられる。
脂肪細胞とNKT細胞との相互作用についてより詳しく解析するために、in vitroの系に時間をかけていく。前駆脂肪細胞から脂肪細胞への成熟、CD1d分子の発現調節のどちらに対しても関与が示されている転写因子PPARgが知られている。このPPARgが脂肪細胞においてもCD1d発現に関わっていると考え、PPARgアゴニストやアンタゴニストを3T3L1とNKT細胞の共培養系に加え、相互作用がどのようになるか検討する。また、3T3L1とNKT細胞がお互いにどのように活性化しているか、サイトカイン、アディポカインを詳細に調べ、活性化機構を明らかにする。in vivo実験においては、MR1拘束性NKT細胞の役割を調べるために、MR1ノックアウトマウスに高脂肪食を給餌し、WTマウスに比べて食餌誘導性肥満がどのようになるかを検討する。
当初の実験計画と多少のずれが生じたため。脂肪細胞とNKT細胞との相互作用をより明らかにするために、次年度も引き続きin vitro実験の割合を増やす予定である。それと同時に、高脂肪食の短期給餌におけるNKT細胞の活性化機構やMR1ノックアウトマウスへの高脂肪食給餌をin vivoにて検討する予定である。培養液やFACS用抗体、PCR用試薬等の消耗品や、in vivo実験のための高脂肪食や実験動物、その飼育代に充てられる。
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