研究課題
3T3L1細胞とマウス組織からソーティングしたNKT細胞を共培養すると、IFN-gやIL-6などの産生が認められた。これは、3T3L1細胞が自身がもつ内因性リガンドをNKT細胞に提示し、NKT細胞が活性化していることを示唆する。次に、NKT細胞が脂肪細胞を活性化するかを検討した。3T3L1細胞にIFN-gを作用させると、NKT細胞の抗原提示分子であるCD1dの発現が上昇した。それに加え、MTPやMCP-1といった分子の発現上昇も認められた。一方、脂肪細胞特異的に発現する抗炎症作用を示すAdiponectinは発現が低下した。このことから、脂肪細胞はIFN-gによって、NKT細胞への抗原提示能が増加し、炎症を惹起するように働くことが考えられる。脂肪組織炎症がインスリン抵抗性を引き起こすという報告は多々あるが、実際、脂肪組織の中でどの細胞がどのように炎症を誘導しているのかは明確ではない。本研究から、脂肪細胞とNKT細胞のとの相互作用が明らかとなってきた。脂肪細胞がCD1d分子を発現し、それを介してNKT細胞を活性化し、NKT細胞はIFN-gを産生する。そのIFN-gは脂肪細胞に働きかけ、より抗原提示能を増加させるだけでなく、Adiponectinの発現も低下させる。その結果、インスリン抵抗性が誘導されると考えられる。今後は、何がNKT細胞のリガンドになっているのかを探索することが課題である。脂肪細胞に脂肪が蓄えられるにつれて増加するようなものなのか、検討していきたい。
2: おおむね順調に進展している
本研究から、脂肪細胞は内因性リガンドにってNKT細胞を活性化し、NKT細胞はIFN-gによって脂肪細胞を活性化し、互いにポジティブフィードバックの関係にあることが示唆された。脂肪細胞とNKT細胞との相互作用を明らかにするという目的から、実験計画はおおむね順調に進んでいると考えている。
3T3L1細胞はIFN-gによって、CD1d分子を発現上昇させ、Adiponectinの発現は減少させる。この現象をWestern blot法を用いてタンパク質レベルでも確認する。また、マウス脂肪組織においても同様なのかを検討する。高脂肪食を給餌したマウスから脂肪組織を採取し、IFN-gの発現レベルを普通食のマウスと比較する。次に、CD1d、Adiponectinの発現レベルを比較検討する。さらに、マウス脂肪組織へのIFN-gの投与やNKT細胞の移入によって、これらの遺伝子・タンパク質の発現レベルの変化を検討する予定である。
当初の実験計画と多少のずれが生じたため。次年度も引き続きin vitro実験にて、NKT細胞と脂肪細胞の相互作用メカニズムを解明するとともに、MR1ノックアウトマウスを用いて、MAIT細胞の食餌誘導性肥満における影響を検討する。
リアルタイムPCR用試薬、ウェスタンブロット用試薬、培養用メディウム、動物用飼料(高脂肪食)などの消耗品に使用する予定である。
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Clin Exp Immunol.
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10.1111/cei.12607
J Leukoc Biol.
巻: 96 ページ: 1077-1085
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http://www.med.kitasato-u.ac.jp/immunology/index.html