本研究はアンジオテンシンII 1型受容体(AT1)に対する経口・経鼻投与型ワクチンの作成を目的とし、平成25年度にワクチン抗原を作成、26年度に降圧効果を検討、27年度に高血圧性腎症,糖尿病性腎症に対する効果を評価する予定であった。平成26年度終了時点で、経口・経鼻ワクチンともに抗原の作成が終了しておらず、27年度では両抗原の作成を終え、免疫原性あるいは降圧効果を検討するにとどまった。 経口型AT1ワクチンに関しては、アグロバクテリウムを用いてコメ種子にAT1部分配列とコレラ毒素Bサブユニット(CTB)とのキメラ蛋白を発現させ、western blottingにより蛋白発現を確認した。次に、このコメ種子をフロイントアジュバントとともに、高血圧自然発症ラット(SHR)に皮下注射したところ、CTBに対する特異的IgG抗体が誘導されたが、AT1に対する特異的抗体は誘導されなかった。本研究では、コメ種子内にAT1-CTB蛋白を発現させることに成功したが、AT1部分配列に対する抗原性は乏しいと結論付けた。 経鼻型AT1ワクチンに関しては、AT1部分配列ペプチドを合成し、キャリア蛋白として肺炎球菌表面抗原(PspA)を、マレイミド基を介して化学的に結合させた(AT1-PspA)。AT1-PspAを各種アジュバントと混合し、皮下注射したところ、AT1に対する特異的IgG抗体が誘導された。次いで、経鼻投与で各種アジュバント,cCHPナノゲルの有無による免疫原性(抗体価)の検討を行ったところ、AT1-PspA 10 ugとcyclic di-GMPアジュバント 50 ugを混合し、cCHPナノゲルに内包したものが、最も高い抗体価を示した。この条件で、AT1-PspAを、雄SHRに4-8週齢にかけて計5回(週1回)経鼻免疫したところ、降圧効果が確認された。今後、降圧の機序を確認する予定である。
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