研究課題
本研究は、肺癌細胞株において、miR-375 の過剰発現が浸潤能を促進することを発見しており、その機序の解明を目的とした。まず、miR-375 は肺の扁平上皮癌で発現が低く、腺癌で発現が高いという知見を用いて、miR-375 の標的遺伝子の候補を、予測データベースや扁平上皮癌と腺癌との間で発現の異なる遺伝子に関する報告から検索し、Claudin-1 を候補とした。次に、肺癌細胞株を用いて、Claudin-1 の mRNA およびタンパク質が、miR-375 の過剰発現によって抑制され、miR-375 のノックダウンによって増加することを示した。また、ルシフェラーゼアッセイを用いて、miR-375 が直接 Claudin-1 の発現を抑制することを示した。また、SK-MES-1 細胞の細胞遊走能は miR-375 の過剰発現によって促進したことから、miR-375 高発現の非小細胞癌が浸潤や転移を起こしやすくなる可能性が示唆された。さらに、非小細胞肺癌の臨床検体を用いた検討で、miR-375 と Claudin-1 の発現に負の相関がみられ、また、miR-375 高発現群で生存期間が有意に短いことを示した。以上を論文にまとめ、Lung Cancer(2014)に投稿し、また同内容を、AACR Annual meeting(2014)で発表した。しかし、miR-375 の過剰発現で浸潤能が促進されるものの、Claudin-1 のノックダウンでは、浸潤能が促進されないことから、浸潤能促進の機序の説明が、Claudin-1 だけでは説明できないという問題が残った。その問題の説明として、miR-375 の別の標的遺伝子の関与を検討する実験を追加し、進めているが、これまでのところ追加の知見は得られていない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Lung Cancer
巻: 85 ページ: 366-372
10.1016/j.lungcan.2014.06.009.