研究課題/領域番号 |
25870719
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
平山 明由 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任助教 (00572405)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタボロミクス / CE-MS / 膵臓がん / 代謝 / ポリアミン |
研究概要 |
今年度は、IPMA(膵管内乳頭粘液性線腫)6例、IPMC(膵管内乳頭粘液性腫瘍)17例、PK(膵管がん、ステージIB~IIIまで)27例の腫瘍組織、ならびに同一患者より採取した非腫瘍組織のイオン性代謝物のメタボローム解析を実施した。 腫瘍の悪性度、ならびにステージの進行に比例して細胞内の解糖系が亢進している傾向が見られ、膵臓がんの組織においてもワールブルグ効果(がん細胞が好気的条件下においても、酸化的リン酸化よりも酸素を必要としない代謝である解糖系にそのエネルギー産生の多くを依存する現象)によるエネルギー産生が行われていることが証明された。 一方アミノ酸に関しては、過去に胃がんや大腸がんの腫瘍組織で見られたような顕著な蓄積は膵臓がんの腫瘍組織内では全く見られず、がん種によってアミノ酸のプロファイルは異なっていることが分かった。 膵臓がんの代謝経路で特徴的だったのは、ポリアミンの合成経路であった。アミノ酸の一種であるオルニチンは、脱炭酸されてプトレッシンというアミンに代謝され、一部はアセチル化されてN-アセチルプトレッシンになる。今回のメタボローム解析によって、オルニチンからプトレッシンへの代謝が腫瘍組織で亢進しているようなプロファイルを得たため、過去の報告を調査したところ、この代謝を司るオルニチンデカルボキシラーゼという酵素の活性が膵臓がんの組織中で亢進していることが分かった(A. L. Subhi et al., Clin. Can. Res., 2004)。 このように代謝プロファイルから膵臓がん特異的な代謝経路を探索することが可能であり、現在その他の代謝経路について調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織の測定は計画時目標数(腫瘍組織、非腫瘍組織それぞれ50検体)を達成している。血液、尿、膵液サンプルに関しては測定まで終了している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの組織の解析で得られた結果を元に、血液、尿、膵液中のバイオマーカー探索を開始する。臨床情報とバイオマーカー候補との相関について、統計学的な手法を用いて明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析の途中で、標準試薬が市販されていない代謝物の候補が見つかり、受託合成会社に依頼するための費用を確保するために当該年度の試薬の購入数を抑えたため。 候補化合物が確定し次第、受託合成会社に化学合成を依頼する。
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