研究課題/領域番号 |
25870721
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 美千代 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (70388065)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 民法典編纂事業 / ブラジル / アルゼンチン / メキシコ / コロンビア / 勧誘規制 / 消費者撤回権 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究成果としては、ラテンアメリカ諸国およびスペインの現行法制との意味づけ・関連づけを行う上での前提作業として、対象国(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、スペイン)の①勧誘規制および②消費者撤回権について調査・分析を行った。 まず、勧誘規制についてみると、メキシコでは、国家主導でトップダウン型の電話勧誘登録制度の整備が行われているのに対して、アルゼンチンとブラジルでは、地方自治体レベルでの制度の整備が先行し、それを全国規模に拡大するというボトムアップ型の様相を呈していることが分かった。これを19世紀の民法典編纂事業と比較すると、メキシコではむしろ地方主導で民法編纂が進んだこと、また、ブラジルとアルゼンチンでは中央政府主導であったことから、近時の民法・消費者法改正では、改正を推進する主勢力がそれぞれ逆転していることが分かった。これは、特にブラジルにおいては、経済発展に伴う中産階級層の爆発的増大といった社会的要因とも無関係ではないであろう。こうした歴史社会的背景と法典化・新制度導入との関係分析が今後の課題となる。 また一方で、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、スペインの制度に共通していたのが、個人情報の開示や利用に関しては、消費者の「同意」を通じ、消費者自身がコントロールするという情報プライバシー権を保障するという点である。したがって、勧誘規制に際しての最も重要な要素は、自己決定権侵害の除去であるといえる。 次に、消費者撤回権についてみると、スペインの制度がEU指令の国内法化に伴い強いヨーロッパ化を呈し、事業者の情報提供義務を強化する反面、適用除外を多数設けてバランスを図っているのに対して、ラテンアメリカ諸国(ブラジル、アルゼンチン、コロンビア)の制度では、事業者の義務強化と並んで消費者の権利強化をさらに促進する傾向が見て取れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の「今後の研究の推進方策」で示したとおり、平成27年度の主要な研究課題は、研究対象国の民法典編纂事業の歴史的側面と、各対象国の現行法制との意味づけ・関連づけを行うことであったため、その範囲での課題達成はできたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度の成果をさらに具体化するため、ブラジルを中心に、19世紀の民法典編纂事業と、現在進行中の消費者保護法典現代化法案の動向を比較分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったブラジル関係図書が年度末締切の時点で未入荷であったため。ただし、すでに入手済みの資料等で今年度の研究遂行に大きな支障はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定図書が今年度入荷済みであることが確認できているため、その購入に充てる。
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備考 |
http://k-ris.keio.ac.jp/Profiles/129/0012822/profile.html
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