平成26年度は、次の3点を中心に研究を進めた。 第一に、日本における相続外財産移転制度について、信託、保険等を利用する仕組みの概要、民法上の財産移転制度との比較等の整理を行った。 第二に、外国における相続外財産移転制度について、基礎的な調査を行った。立法・実務の動きが激しい分野であるため、難航したが、相続法の概説書を確認した後、信託法などの相続外財産移転制度に関する文献を集めた上で、関連すると思われる部分について重点的に資料を収集するという方法をとった。扶養制度との関係までは研究を進めることができなかったが、おおよそのイメージをつかむことはできた。さらに、近年のフランス及びドイツにおける立法改正とその意義も検討対象に加えた。 第三に、以上の研究をふまえて、財産承継と扶養・世話との関連づけの可能性及びそれを考慮に入れる解釈について検討した。特に、寄与分の認定とその限度、寄与分と遺留分制度との関係・計算方法、被相続人の遺言による意思実現を妨げる遺留分減殺請求権行使の制限など、現在は問題となることが少ないものの、今後、裁判例が増加すると考えられる論点を中心に考えをまとめた。いまだ十分な比較法研究には至っていないが、外国法における解釈方法をそのまま参考にするのではなく、そのような解釈の背後にある相続制度ないし扶養制度のあり方及び意義に関する考え方に留意し、それらの思想が日本法になじみやすいものか、また、従来の争点の解釈との整合性はどうかという観点から考察を行った。
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