本研究は三教交渉関係の文献をテキストデータ化して公表し、三教交渉の思想史的な考察を目指すものである。 当該年度においては、昨年度よりひきつづき、若手中国学研究者の協力を得て『三教不斉論』のテキスト校訂・現代語訳・注の作成を行った。具体的には7月下旬から8月初めにかけて、台湾・中央研究院において日本から2名、韓国から1名、中央研究院に所属する2名の合計5名の研究者で読書会を行った。それらの成果をとりまとめたものとして、2016年1月に国書刊行会より『最澄・空海将来『三教不斉論』の研究』として出版した(日本学術振興会より平成27年度研究成果公開促進費を受けた)。最澄・空海が日本にもたらし、日本に残存する貴重な唐代(八世紀)の文献である『三教不斉論』を詳細な注とともにわかりやすい現代語で翻訳し、あわせて研究論文を公開したことは、当該分野に重要な貢献をなしえたものと考えている。 8月にドイツ・エアフルト大学で開催された第21回国際宗教史学会では思想史的な知見のもと研究成果にもとづく発表を行った。また諸外国の宗教研究者との情報交換を行った。 昨年度までに行ってきたOCR読み取りにもとづき、補正を行ってきたテキストデータ入力については代表者による確認作業を完了しており、順次ホームページで公開していく。 研究期間には研究代表者が所属する駒澤大学の図書館が所蔵する『三教指帰』の江戸期注釈書の刊本のデジタルデータを図書館に依頼して、公開し、アクセスを容易にすることができるようにした。
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