【背景】近年、本邦では未婚化・晩婚化の影響により高齢出産が増加し、少子化に拍車がかかると同時に、不妊治療患者が増加している。さらに出生体重はこの十数年間次第に減少し、この背景には、女性の妊娠前からのやせ体型の増加も理由の一つと考えられる。今回我々は、母体体格と妊娠中期の栄養状態、体重増加量、出生体重との関係を調査したので報告する。 【方法】2013年2月~2014年4月まで、当院で正期産にて出産した96例を対象に、妊娠前の体格と出生体重、妊娠中期の栄養状態、母体体重増加量、至適体重増加状況との関連を検討した。なお、栄養調査は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた。妊娠全期間の体重増加状況は、厚生労働省の基準を用いて妊娠前の体格別に「過小」、「適正」、「過剰」の3群に分けた。 【結果】妊娠前の体格別に妊娠中期のエネルギー摂取量、出生体重・低出生体重児の割合を検討した結果、3群間に有意な差はみられなかった。妊娠全期間の体重増加が「適正」であった者の割合は、やせ群(BMI<18.5)53.3%、標準群(BMI18.5-24.9)59.7%、肥満群(BMI≧25)25.0%であり、やせ群・標準群に比較して、肥満群で有意に低値を示した(p<0.05)。出生体重は、妊娠中期の体重増加量(r=0.39、p<0.001)と有意な正の相関を示した。妊娠中期の体重増加量は、妊娠全期間の体重増加量(r=0.89、p<0.001)と有意な正の相関を示した。【考察】今回の検討において、妊娠中期と妊娠全期間の体重増加との間に関連が認められ、妊娠中期までの栄養指導が重要であると考えられた。特に肥満群では妊娠中期までの栄養介入によって良好な体重コントロールができる可能性が示唆された。今後、妊娠中期までの至適体重増加基準と実践的な個別栄養教育の検討が必要であると考えられた。
|