アトピー性皮膚炎(AD)患者は、しばしば抗ヒスタミン薬が奏功しない難治性の激しい痒みを発症する。痒みは強い掻破行動と湿疹の増悪をもたらし、患者のQuality of Lifeを著しく障害することから、幅広い視点に立った病因解明と新規止痒治療薬の開発が切望されている。抗ヒスタミン薬抵抗性の難治性痒みの原因の一つに、プロテアーゼが関与することが示唆されている。平成25年度は、セリンプロテアーゼの一種であるグランザイムA(GzmA)の難治性痒みに対する関与を解明するため、1)アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚組織及び血清中のGzmA量を検討し、2) 痒みへの関与が示唆されているプロテアーゼ活性化受容体(PAR)2の強制発現系を用いてGzmAのPAR2活性化に対する直接的な影響を検討した。その結果、健常者の皮膚と比較してAD病変部は、GzmA が有意に増加しており、CD4+及びCD8+T細胞との共局在が認められた。次に、正常ヒト表皮角化細胞を用いてPAR2のN末端に蛍光活性化タンパク質(FAP)タグを付加したFAP-PAR2の強制発現系を作成した。FAP-PAR2強制発現細胞と蛍光試薬αRED-npを反応させるとPAR2が細胞膜表面に検出されたが、GzmAと反応後に蛍光試薬を添加すると、細胞膜上にPAR2はほとんど検出されなかった。このことからGzmAがPAR2のN末端部位の切断を通じて受容体を活性化することが強く示唆された。
|