研究実績の概要 |
本研究は、難治性痒みの一因である表皮内神経線維に対するエキシマランプ照射の影響を検討し、その痒み抑制メカニズムを明らかにすることを目的とした。2013年度は培養ラット後根神経節細胞を用いて、エキシマランプ照射が神経線維の退縮を誘導することを明らかにした。2014年度は動物モデルを用いて、エキシマランプ照射の1)痒みとその他病態に対する影響、2)表皮内神経線維の消退効果と光線療法の副作用である光産物産生の関係について検討を行った。これらの検討では前年度と同様に、297 nm以下の短波長をカットするエキシマフィルターの装着の有無による効果の違いを比較し、エキシマランプが放射する波長308 nmの有効性を検討した。 アトピー性皮膚炎モデルマウスでは、痒みの行動である掻破行動の増加が認められるが、単回のエキシマランプ照射(250 mJ/cm2)は、照射24時間後の掻破行動回数を有意に抑制した。一方、皮膚炎スコアやTEWLに対する効果は、照射5日目以降に改善傾向を認めた。このことから、エキシマランプの痒みに対する速効性が示唆された。 表皮内神経の増生が認められるドライスキンモデルマウスにおいて、単回のエキシマランプ照射は照射線量依存性(100, 250 mJ/cm2)に表皮内神経の増生を抑制したが、フィルター装着による差は認められなかった。光発癌作用の指標となる光産物CPD産生は、エキシマランプの照射線量依存的な増加が認められ、フィルター装着なし+250 mJ/cm2照射群で顕著に増加した。その一方で、このCPD産生はフィルター装着により効果的に抑制された。したがって、本フィルターは表皮内神経増生抑制効果を保持したまま安全な照射を可能にすることが明らかになった。 これらことからエキシマランプ照射は、表皮内神経が関与する難治性痒みに対し、有効かつ安全な治療戦略の一つであることが示された。
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