研究課題/領域番号 |
25870731
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
三代川 寛子 上智大学, アジア文化研究所, 客員研究所員 (90614032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エジプト / コプト / ナショナリズム / アイデンティティ |
研究概要 |
本研究は、コプトの民族的・宗教的アイデンティティの形成とそれがコプトの政治行動に与えた影響を実証的に明らかにすることを目指すものである。 エジプトのコプト・キリスト教徒の国民統合問題を考察する上で非常に重要な焦点となるのがエジプト・ナショナリズムであるが、その中でも特に、古代エジプト人との血縁的・文化的つながりを重視する潮流をファラオ主義という。本研究ではコプトの間でのファラオ主義に注目し、国民国家設立期にあたる19世紀末から20世紀初頭までの間の3事例に詳細な検討を加える。その3事例とはすなわち、コプト暦元旦を祝うナイルーズ祭復興運動、コプト語復興運動、コプト博物館設立である。これらの事例研究を通して、それがいかにコプトの民族的・宗教的アイデンティティ形成に寄与したか、そしてコプトのエジプト国民化/民族化が完了した後、そのアイデンティティがコプトの政治行動にどのような影響を与えたかを明らかにする。 本年度は、これまでに収集した資料を基に、3回の学会発表・研究発表を行った。4月にポートランド州立大学(米国・オレゴン州)で開催されたMinorities of the Modern Middle East Workshopに参加し、ナイルーズ祭復興運動についての研究発表を行った。この研究会から論集を出版する計画が進行中である。また、10月に日本オリエント学会第55回年次大会(京都外国語大学)で19世紀末から20世紀初頭におけるコプト語復興運動についての研究発表を行い、11月にはアメリカ宗教学会(ボルティモア、メリーランド州)でも同運動について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまで収集した資料を基に、学会発表2件、研究会での研究発表1件を行うことができた。学術雑誌への投稿については予定よりも遅れているが、その代わりに研究会での発表を通して論集出版の計画が持ち上がったため、概ね予定通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、コプト博物館の設立とそれに対する評価について、重点的に取り組む。入手済みの資料の読み込みを進めるとともに、関連資料の収集および研究者らとの意見交換のため海外出張を行う。それと並行して、夏と秋に学会での口頭発表を行う。年度の後半では、学会での発表内容を論文にまとめ、学術雑誌に投稿して研究成果を公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、資料精読と研究発表に集中したため、資料収集のためのやや長期の滞在を行わなかった。海外出張を2回行ったが、いずれも研究発表のための短期滞在であったため、旅費支出が当初の想定を下回った。 2014年度は、資料収集のために夏季休暇中に長期の海外出張を行う予定である。場合によっては、冬期休暇中にも2週間ほどの出張を行う可能性もある。
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