研究課題/領域番号 |
25870736
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山岡 利光 昭和大学, 腫瘍分子生物学研究所, 講師 (40384359)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上皮成長因子受容体 / 腫瘍壊死因子 / 肺障害 |
研究実績の概要 |
われわれは、現在までに、上皮成長因子受容体(EGFR)が炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)から活性化(トランス活性化)を受けることにより、上皮細胞をアポトーシスから保護していることを報告した。EGFRは、その過剰発現や過剰な活性化が発癌との関連が報告され、多く癌種で治療標的とされている。一方で、EGFRは上皮性悪性腫瘍のみではなく正常肺組織でも発現しており、細胞・組織の恒常性維持という役割を担っている。肺がん治療薬として用いられるEGFR阻害剤の急性肺障害が大きな問題となっているが、EGFR阻害剤の正常肺組織に及ぼす影響や肺障害におけるTNF-EGFRシグナルの関与については、これまで明らかにされていない。 本研究では、TNFにより誘導されるEGFR受容体のトランス活性化シグナルに焦点を当て、炎症性肺疾患の病態や急性増悪に及ぼす影響を明らかにすることを特色とする。肺組織で特異的に炎症性サイトカインであるTNFを高発現するトランスジェニックマウスにEGFRの発現が約90%抑制されたEgfr-Velマウスを交配させることで、両者の形質を発現するマウスを作成し、特に肺組織の形態的変化を評価する。本研究により、EGFR阻害剤の正常肺組織に及ぼす影響と肺障害を誘導する分子機構が明らかになると期待される。さらに、特発性間質性肺炎、肺線維症といった難治性慢性炎症性肺疾患の治療指針に重要な示唆を与える結果が得られるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、これまでSPC-TNFマウスモデルにEGFR阻害剤を投与することで肺組織に著しいアポトーシスと炎症細胞の浸潤、間質の肥厚が生じることを明らかにした。本研究計画では、肺障害発症の分子機序を明らかにし、発症危険因子の同定や発症した際の治療戦略を確立するために、以下の研究項目を予定している。 ① EGFR阻害剤をSPC-TNFマウスに投与することにより生じる肺障害の分子生物学的機序を解明する。 ② 新規肺障害マウスモデルを作製し、EGFR阻害剤に誘導される肺障害の治療を臨床的に応用するための戦略を確立する。上記、①については、問題なく進展している。しかし、②は、購入予定であったマウスが、受精卵からの成長に問題が生じ、入手に時間がかかっていたが、昨年8月に納入された。現在、新規肺障害マウスモデルの作成をしており期間内の研究遂行はおおむね順調であると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
上記に記載した様に、①については、問題なく進展している。しかし、②は、購入予定であったマウス(EGFR wa2マウス)が、受精卵からの成長に問題が生じ、入手できていない。このため、マウスの種類を変更し、Egfr-Velマウスを購入する事とした。 新規肺障害モデルマウスの作製において、当初は、SPC-TNFマウスとEGFRwa2マウスを交配させる予定であったが、Jackson研究所において受精卵からの成長に問題が生じた。そのため、よりEGFR発現が抑制されたEgfr-Velマウスを使用し、新規肺障害マウスモデルの作成を遂行中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では、肺障害発症の分子機序を明らかにし、発症危険因子の同定や発症した際の治療戦略を確立するために、以下の研究項目を予定している。 ② 新規肺障害マウスモデルを作製し、EGFR阻害剤に誘導される肺障害の治療を臨床的に応用するための戦略を確立する。②は、Jackson研究所より購入予定であったEgfrwa2マウスが、受精卵からの成長に問題が生じ、購入出来なかった。このため、同様にEGFR発現の低下したEgfr-Velマウスに変更した。昨年8月に無事に当該マウスが納入された。現在、新規肺障害マウスモデルを作成中である。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究計画の、② 新規肺障害マウスモデルを作製し、EGFR阻害剤に誘導される肺障害の治療を臨床的に応用するための戦略を確立する。 購入予定であったEgfrwa2マウスが納品されなかった。このため、同様にEGFR発現の低下したEgfr-Velマウスに変更した。昨年8月に無事に当該マウスが納入された。現在、新規肺障害マウスモデルを作成中である。
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