妊娠ラットに与える食餌のタンパク質の割合を通常食の20%から10%へ減らすことで低出生体重(SGA)仔を出産させ、その仔ラットを母ラット1匹に対して7匹もしくは14匹に分けた。通常食の母ラットが出産した仔ラットをコントロールとして同様に分けた。これら4群(SGA-7匹群、SGA-14匹群、control-7匹群、control-14匹群)に通常食で飼育した母ラットを代理母として用いた。出生直後から酸素負荷装置(Oxycycler)を用いて50/10%OIRラットモデルを作製した。酸素負荷は14日間行い、その後は生後18日まで大気中で飼育した。生後18日に仔ラットを屠殺後採血と両眼球を摘出を行い、右眼は網膜を固定・染色して網膜血管新生スコアおよび無血管領域の測定を、左眼は網膜をホモジェネートした後、上澄み液を用いて網膜内インスリン様成長因子(IGF)-1をELISAキットで測定した。血中のIGF-1濃度も測定した。その結果、出生時の体重はコントロールと比較して有意にSGA群で低体重だった。生後の体重増加は匹数の違いによってその差が見られ、14匹群と比較して7匹群で有意な体重増加を認め、血中IGF-1濃度や網膜内IGF-1濃度は体重と相関していた。一方網膜血管新生スコアと無血管領域面積はコントロールと比較してSGAの7匹と14匹群でより抑制されており、血中IGF-1との相関は見られなかった。これらの結果より本研究では低出生体重で生後に過剰栄養を与えないほうが最も無血管領域が小さく、網膜血管新生を抑制した。臨床的にはSGAの未熟児や体重増加の悪い児で血中IGF-1が低濃度で網膜症の発症や重症化を起こしやすいと報告され、栄養投与で血中IGF-1濃度を上昇させることで網膜症が予防できるのではないかと期待されているが、本研究とは一致しない結果であった。この相違は動物モデルとヒトの違いによるものか、酸素投与濃度や栄養摂取量の違いによるものか、今後の研究でさらに検討する必要がある。
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