研究課題
本年度は、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder; ASD)のMRI研究を継続して行った。成人ASD男性46名および健常成人男性46名から収集した高解像度構造画像および拡散テンソル画像に対して、データ融合型の解析手法を用いて解析を行った。ASD当事者は、紡錘状回、上側頭溝や前頭眼窩野などの社会性に関わる脳領域の体積が減少し、同時にそれらを繋ぐ線維(下縦束、鉤状束、下前頭後頭束)の結合低下が生じていることが明らかになり、ASD当事者の灰白質・白質の形態的異常はネットワークレベルで生じている可能性が示唆された。この解析結果は、2014年9月に国際専門誌(Neuroimage: Clinical)へ投稿し、同年12月に受理された。また、成人ASD当事者50名および健常成人50名から収集した安静時fMRIデータを用いて、局所的な結合(local connectivity)と脳活動レベルを定量的に評価した。その結果、ASD群は健常群と比べて、両側の紡錘状回および右中側頭回後部のlocal connectivityが低下し、脳活動レベルも右紡錘状回および右中側頭回後部で低下していることが明らかになった。さらに、ASD群における右中側頭回後部のlocal connectivityの低下が、自閉症スペクトラム指数の社会性に関する項目と負の相関を示すことが明らかになった。この結果の一部は、2014年の日本神経科学会にて発表した。さらに解析をすすめまとめたものを現在国際専門誌に投稿中である。加えて、認知課題を策定し、その行動研究を実施した。健常成人18名、ASD患者15名から行動データを収集し、現在解析を進めている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
NeuroImage: Clinical
巻: 7 ページ: 155-169
10.1016/j.nicl.2014.11.019