• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

解ける確率過程を用いたロングテール現象の分析

研究課題

研究課題/領域番号 25870743
研究種目

若手研究(B)

研究機関中央大学

研究代表者

山本 健  中央大学, 理工学部, 助教 (00634693)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード確率過程 / 統計則 / 応用数学 / 統計物理学
研究概要

「正のフィードバック」と「履歴の蓄積」の効果を取り入れた確率モデルからベキ分布が導かれることを理論的に示した。本研究では、このモデルを商品の売上の統計的性質、特にロングテール現象の解明に利用することを目指している。理論的な結果は実際のデータを分析するための準備段階と位置づけられる。同時に、モデルの解析結果はベキ分布の1つの特徴づけを与えてもいる。
本研究のモデルがケステン過程とよばれる確率過程と自然に対応づけられることを明らかにし、この性質を利用して売上に対応する確率変数の分布の裾に定常的なベキ分布が現れることを示した。ベキ分布の指数を特徴づける方程式もケステン過程との比較により得ることができた。
モデルを構成する式の1つがジブラ過程とよばれる掛け算型の確率過程である。モデルの性質を深く知るために、ジブラ過程の特徴も調べた。ジブラ過程からは標準的に対数正規分布が導かれることが知られているが、対数正規分布への収束において確率変数の平均が保存されないことが分かった。その原因が対数をとるという非線形な変換と平均をとる操作が可換でないためであることを突き止めた。
さらに、本研究の確率モデルがジップの法則と関係していることが分かった。ジップの法則はきわめて多様な場面で現れるにもかかわらず、ベキ指数の意味づけなどに理論的に不透明な部分がある。提案したモデルの解析の結果、ある種の対称性(売上の増大と減少の釣り合い)があれば、総売上に対応する確率変数の分布はジップの法則を満たすという結果が得られた。この結果がジップの法則の理論的な理解に寄与するものと期待している。特に、単語の出現頻度数分布や Twitter ユーザーの影響力の分布にみられるジップの法則などが本研究のモデルと関係していると考えられ、これらの分野への応用の可能性が示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

モデルの解析は、ほぼ計画どおりに進めることができた。
本研究のモデルがジップの法則に関係していることは、当初の計画では想定していなかった発見である。この結果は研究の目的(ロングテール現象の分析)に直接的に関係するものではないが、提案したモデルの価値を高める材料にはなったと考えられる。
この点から、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

モデルの理論的な解析の結果をもとにして、今後は実際の売上のデータの分析に着手する。まずは、映画の興行収入額の統計的性質について調べる。映画のデータベースでは、日ごと・週ごと・月ごとの興行収入額の一覧が容易に入手できるので、モデルと比較するのに都合がよい。日ごとのデータでは曜日ごとの偏りが想定され、月ごとのデータでは粗すぎる可能性がある。したがって、週ごとの興行収入のデータを分析に利用するのが妥当であると考えられる。興行収入の分布がロングテール性をもつことの確認をおこなう。そして、週ごとの興行収入の分布からモデルを通じて推定されるべき指数を実際の値と比較し、モデルの適切性を評価する。

次年度の研究費の使用計画

当初予定していた出張を取りやめたため。
図書の購入および旅費の一部に充当する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Stochastic model of Zipf's law and the universality of the power-law exponent2014

    • 著者名/発表者名
      K. Yamamoto
    • 雑誌名

      Physical Review E

      巻: 89 ページ: 042115, 4 pages

    • DOI

      10.1103/PhysRevE.89.042115

    • 査読あり
  • [雑誌論文] "Average-value paradox" of the lognormal distribution2013

    • 著者名/発表者名
      K. Yamamoto and J. Wakita
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 82 ページ: 11301, 3 pages

    • DOI

      10.7566/JPSJ.82.113001

    • 査読あり
  • [学会発表] ジップの法則における規模と順位の反比例関係に対する一考察2014

    • 著者名/発表者名
      山本健
    • 学会等名
      第10回数学総合若手研究集会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20140304-20140304
  • [学会発表] ジブラ過程の蓄積によるベキ分布2013

    • 著者名/発表者名
      山本健
    • 学会等名
      日本物理学会2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      20130925-20130925
  • [学会発表] ジップの法則のベキ指数にはなぜ-1が多いのか?2013

    • 著者名/発表者名
      山本健
    • 学会等名
      日本応用数理学会2013年度年会
    • 発表場所
      アクロス福岡
    • 年月日
      20130911-20130911
  • [学会発表] Power-law behavior in accumulation of the Gibrat process2013

    • 著者名/発表者名
      K. Yamamoto
    • 学会等名
      Mathematical Theoretical Physics
    • 発表場所
      京都大学基礎物理学研究所
    • 年月日
      20130730-20130730

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi