研究課題
若手研究(B)
X線天文学の新たな局面を切り開くため、曲げられた大きなシリコン単結晶を用いた、鉄輝線付近に特化する偏光感度の極めて高いブラック反射型偏光計の開発を目指している。まず、曲げる対称である単結晶として、直径200mm、厚み50~100μm程度のシリコン(Si 100)を用意した。Si 100の400面反射は、X線天文学で重要である鉄輝線に対して、45度付近でブラック反射をする。45度で入射したX線は、最も偏光が測定しやすい条件を満たすため、最も適切である。大きく薄い結晶は、共同研究してきた企業との精密加工により製作をした。次に集光能力をあげるために、CVD法を用いて、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)をシリコン結晶に蒸着することにより、その間で生まれる残留応力によって曲げる。今までの研究では、曲げられたシリコン結晶は、円筒形であり、曲率は、DLCの厚みを変える事で制御ができることが分かっていた。今回は、円筒から放物面の形状に制御することを目標とした。まずは、DLCをシリコン結晶に蒸着する際、選択的に厚みを分布をもたせることにより、放物面の形状になるかを確認した。表面形状測定と集光実験を行った結果、1分角程度の角度分解能が得られる事が分かった。この成果を学会等で発表を行った。また、これらの成果について、現在、特許出願を論文執筆をしている。並行して、X線測定をするためのビームラインの整備をした。また、公開天文台の既存の赤外線カメラを使って、偏光観測の可能性について、実際に天体の観測を行い、調査をした。
2: おおむね順調に進展している
1年目の目標は、曲げる形状を、円筒から放物面に制御することが目的であった。放物面に曲げることには成功しているので、順調にしていると思われる。また、思うような曲率に放物面をおよそ制御できているのも大きな収穫である。
シリコン結晶を思うような曲率に放物面に制御を完全にする。また並行して、放物面から回転放物面へ、さらにシリコン結晶の制御を行う。お椀型の回転放物面に制御することは困難が伴うことが予想されるが、2つのアプローチにより進める。1つ目は、放物面に曲がったシリコン結晶を、既存するナノパルスレーザーシステムにより加工を行う。2つ目は、ダイシングカットにより切り出し、曲げたシリコン結晶を回転放物面の金属に貼付けることにより製作をする。どちらがよいのか、表面形状に測定を行い、最後に、曲げられた単結晶を既存のビームラインにてX線測定で評価を行う。これらによって、偏光感度、有効面積、エネルギー帯域、集光能力の4つの条件を調べる。製作によって得られた全てのパラメータから、曲げられたシリコン結晶を用いた偏光計全体の設計を行う。
3月に計画をしていた実験出張が次年度にずれこんだため、1回分の出張費(約4万円)が残った。次年度の実験出張の経費として使用をする予定である。
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