研究課題/領域番号 |
25870745
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐々木 創 中央大学, 経済学部, 准教授 (40634100)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境ビジネス / 水メジャー / 環境産業 / トータルマネジメント / 海外展開 / 第3モード / サービス取引 |
研究概要 |
本年度において、環境サービス貿易に着眼し、グローバル環境ビジネスの経済分析を実施するために、まず世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、欧州連合統計局(EUROSTAT)などの各国際機関において環境サービス貿易がどのように定義されているかを整理した。 WTOにおいては、環境サービスに関する議論について大きな進展が見られていないといってよい。また、IMFは「国際収支統計」の集計方法が改定されたが、環境サービスの貿易量を把握する方向性は示されていない。こうした中で、OECD/EUROSTATがIMFのBPM5を細分化し、独自にWaste treatment and depollutionの貿易状況を把握しているが、その運用方法は不明瞭であることが明らかになった。 つまり、現時点においては環境サービスの貿易量を各国際機関では把握していない。OECD/EUROSTATの統計情報の精査について次年度に実施することと並行し、今年度においては、環境サービス貿易量を把握するために、Environmental Business Internationalが実施しているグローバル環境ビジネス市場推計を応用し、ORBIS(ビューロー・ヴァン・ダイク社提供の世界最大1億1千万社の企業・財務データベース)を活用して、環境ビジネスで株式市場に上場している企業(2014年2月現在で260社)の財務データの分析を代替手法として採用した。 この結果、穀物・資源・金融メジャーと同義で「グローバル市場で寡占市場を形成」する「水メジャー」などの環境企業の存在には疑義が生じ、したがって、日本の環境企業が欧米企業と比較して海外市場で出遅れているという定説にも疑義があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においては、企業や政府機関などのヒアリング調査の進捗が遅れているものの、各国際機関において環境サービス貿易がどのように定義されているかを整理し、現時点においては環境サービスの貿易量を各国際機関では把握していないことを明らかにし、その成果を学会発表(「環境サービス貿易の定義の類型化試論―グローバル環境ビジネスの国際比較に向けて―」、環境経済・政策学会2013年大会口頭発表、神戸大学、2013年9月21~22日)および論文投稿(「国際機関における環境サービス貿易に関する議論の進展状況―グローバル環境ビジネスの国際比較に向けて―」、『経済学研究』第63巻第2号、北海道大学、pp.123-132、2014年)するなど順調に進展している。 また、環境サービス貿易量を把握するために代替手法を用いて分析を始めることで、穀物・資源・金融メジャーと同義で「グローバル市場で寡占市場を形成」する「水メジャー」などの環境企業の存在には疑義が生じ、したがって、日本の環境企業が欧米企業と比較して海外市場で出遅れているという定説にも疑義があることが明らかにすることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
1)OECD/EUROSTATの統計情報の精査・・・国際機関で唯一、独自にWaste treatment and depollutionの貿易状況を把握しているOECD/EUROSTATに対して、その運用方法の把握をヒアリング調査で実施する 2)代替手法による環境サービス貿易に関する経済協力開発機構諸国間の国際競争力の比較・・・平成25年度に実施した環境サービス貿易量を把握するために代替手法を発展させ、経済協力開発機構諸国間の環境企業の国際競争力を算出する。 3)担い手、競合相手、受益者の3方向からヒアリングによる仮説の検証・・・担い手については参入方策や海外ビジネスの人材育成策や日本政府としての企業支援策のあり方などを、競合相手には参入方策や海外ビジネスの人材育成策、政府開発援助の活用状況等について、受益者に対しては資本力、交渉力、環境政策への貢献、進出決定までの期間等について、日本と競合国との差異について検証するヒアリングを実施する。 4)日本の国際環境ビジネスの促進に関する政策的含意の導出・・・上記1)~3)を踏まえて、日本の国際環境ビジネスの促進に関する政策的含意を導出する。
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