WTO,IMF,OECD,EUROSTATなどの各国際機関における環境サービス貿易の把握状況は,貿易量どころかその定義さえも定まっていない状況である。こうした中で,唯一OECD/EUROSTATがIMFの国際収支マニュアル第5版を細分化し,独自にWaste treatment and depollutionの環境サービス貿易状況を公開している。本年度、OECD統計局へのヒアリングを実施し,Waste treatment and depollutionの定義だけが確定しているが,その他の環境サービスは定義すら確定していないこと,また同貿易量の大半は,インターネットを通じたコンサルティングサービスといった「国境を超える取引(第1モード)」しか把握できておらず,第3モードは困難であることが明らかになった。 したがって、環境サービスの国際展開状況を明らかにするために、世界最大級(約1億1千万社)の企業・財務データベースであるORBIS(ビューロー・ヴァン・ダイク社提供)を活用し、世界各国の株式市場に上場している環境企業の個社データを活用した分析を行った。その結果からは,従来から指摘されてきた「日本の環境企業の国際展開が欧米企業と比較して出遅れている」とはいえないことがわかる。むしろ,本結果から特筆すべきことは「環境企業の海外展開はどの国でもそれほど進んでいない」ということが明確になった。 さらに、環境企業の国際展開で先行しているといわれるフランスの支援策と日本のそれを比較し、日本の中で突出している北九州市やフランスの支援策内容からも,自治体と環境企業の連携は有効な手段であることや,経済産業省や環境省,JICA等の環境関連ビジネスの国際展開に関する実証事業については,フランス政府の支援策よりも充実していることを確認した。
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